マンション管理費の滞納!理事会はどう対応するべきか?

管理費の滞納

マンションを維持管理していくときの問題の1つに「管理費等の滞納」が挙げられます。

各住戸が毎月の管理費や修繕積立金を支払うことは管理規約に定められておりますが、各家庭で経済事情は異なりますし、トラブルを抱える住戸もありますので、管理費等を滞納する住戸は少なからず現れます。

入金を忘れたなど1~2ヶ月分程度の少額な滞納で終われば、特に問題になりませんが、実際に支払う能力が無い場合は滞納期間が長期に及ぶ可能性があり、大きな問題になります。

管理費や修繕積立金は、各住戸に付帯することから、滞納中に売買で区分所有者が変更しても、新しい区分所有者にも支払義務が生じるため、管理組合として取り損ねることはありません。

しかしながら、多額の滞納があることで資金が不足し、日常の管理に係る費用や修繕工事の費用が支払えなくなってしまう懸念はあります。

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世間の管理費滞納の発生率

国土交通省の調べによると管理費の滞納戸数割合は以下です。

管理費の滞納がある組合管理の滞納がない組合
平成10年48.3%48.4%
平成15年26.7%56.4%
平成20年38.5%51.9%
平成25年37.0%56.1%

平成25年度マンションの総合調査結果からみたマンションの居住と管理の現状

信じられないことに3割以上の管理組合が管理費滞納の問題を抱えているのです。

マンションの維持管理の最大の収入源は、月々徴収されるこの管理費です。このため、滞納が発生すると、マンションの管理が維持できなくなる可能性も出てきます。

では、管理組合の執行機関である理事会は、管理費滞納の問題に対して何をすべきかなのでしょうか?

管理費滞納で理事会がすべきこと

管理会社の督促業務の実施状況を把握する

一般的に管理費等の滞納が発生した場合、まず督促を行うのは管理業務を委託されている管理会社です。

管理会社から滞納している区分所有者に対して督促の電話や書面を発送などを行っていくはずですので、まずはいつどのように督促をしたのかという実施状況を確認しましょう。

理事会側が滞納状況を気にしているということを管理会社に意識させるだけでも管理会社の督促に対する姿勢が変わることがあります。

また、督促状況を確認した結果、「滞納住戸に何度電話しても留守でつながらない」「書面は送っているが電話はしていない」という状況であれば、曜日や時間を変えて電話をするなどアプローチ方法の改善を促すことができます。

なお、多くの管理会社は督促業務を「督促状の発行」「電話・訪問による督促」と定めており対応の督促期間は6ヶ月となっています。

理事会として書面の投函や面談を試みましょう

管理会社からの督促の結果、解決の目途が立たない場合は、理事会側からのアプローチが有効です。

外部である管理会社から督促をされるのと同じマンションの居住者である理事会の役員から督促をされるのでは受け手側の意識が違います。

同じマンションの居住者に迷惑をかけてしまっているという意識が働くこともあるので、滞納問題の解決に有効な手段の1つです。

理事長名で滞納管理費の支払いをお願いする書面を投函してみることが最初のアプローチですが、それでも解決に向かわない場合は、滞納している居住者との面談をセッティングすることも方法の1つです。

電話や書面よりも実際に顔を合わせて面談することで、滞納している居住者の状況や滞納理由が明確に確認できますし、今後の返済計画について話合う機会にもなります。

遅延損害金の付加を伝える

一般的なマンションの管理規約には、「管理費等を滞納した場合、遅延損害金を付加して請求できる」という条文があります。

あくまで請求できるという内容であり、請求しないという選択肢もあります。短期の滞納の場合は、悪意ではなく、入金の失念など善意であることが多いため、すぐに遅延損害金を付加することは一般的にはありません。

長期の滞納の場合には、「遅延損害金を付加する可能性があること」や「支払までに一定の期限を設け、これを過ぎた場合は遅延損害金を付加すること」を書面で通達することは、滞納している居住者の危機感を煽るために有効な手段です。

駐車場・駐輪場を解約する

前述の通り、管理費や修繕積立金は住戸に付随するため、滞納住戸の所有者が替わっても取り損ねることはありません。

しかしながら、一般的に駐車場や駐輪場は施設使用契約を締結して利用していることが多く、その場合は、滞納している金額は住戸ではなく、契約者に付随します。

新しい区分所有者に支払義務は生じないため、契約者が退去した場合は滞納している使用料を取り損ねる可能性があります。

多額の使用料を取り損ねる事態になりますと、管理組合の収支にも影響を及ぼすため、滞納が長期化し始めたら、書面で通達し、駐車場や駐輪場を解約しておきましょう。

それでも管理費が支払われない場合

管理組合から以上の督促や要請があっても、一切テーブルに着かない長期滞納者の対応ですが、これはもう法的措置に移行するしかありません。

最初は、内容証明による督促状の発送です。次に、60万円以下の滞納額であれば、判決が早く、小額訴訟が管理組合にとって有効だと思います。訴訟費用も安価で申し立ての手数料であれば2500円程度です。

ただし、確定判決が出ても、支払ってこない場合があり、最後は強制執行になりますが、管理費の滞納の時効は5年となっており、また裁判所は、長期滞納者の財産がどこにあるのかまでは調査してくれません。

このため、長期滞納者に支払い能力がなく、滞納額が大きいのであれば、長期滞納者のマンション住戸の競売の訴訟を起こすことが、管理費の回収の最終手段となってしまいます。

管理費滞納のまとめ

分譲マンションを購入すると必ず『管理費』の支払いが必要となります。管理費無料というマンションは存在しません。

そして、誰しもがマンションを購入した時点では、管理費を滞納することなど考えていません。

しかし深刻度合に違いはありますが、引き落としができなかったことを滞納とするのであれば、管理費の滞納が発生しているマンションは少なくありません。

滞納は長期になればなるほど解消が難しくなっていきます。管理費等の滞納が発生した場合には、早い段階から解消に向けて、強めのアプローチを心がけましょう。

記事監修

マンション管理士:古市 守(ふるいち まもる)

管理会社変更をはじめとするマンション管理組合のコンサルティング、管理計画認定制度支援や事前審査担当、自治体のマンション調査、マンション管理コラムの執筆・監修などで活動。

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