限界マンションが生まれる2つの理由とその防止策
「限界マンション」という言葉をご存知でしょうか。
その名の通り、維持管理をしていくことに限界を迎えてしまったマンションを指す言葉です。
限界の内容は「建物維持の限界」と「コミュニティ維持の限界」の2種類に分かれます。なぜこのようなマンションが発生してしまうのか、今回は限界マンションになってしまう原因と防止策についてまとめました。
限界マンションの原因
平成26年、平成27年は10万戸以上の新築マンションが供給され、平成28年においても約10万戸が供給されております。
一方で、ご存知の通り、日本の人口は減少傾向にありますので、新しいマンションに住み替えが進むことを考えれば、築年数が経過したマンションには空室が増えてしまうのは必然かもしれません。
現在、日本のマンションストック数は633万戸を超えていますが、このうち約104万戸が昭和56年6月以前に建築された、いわゆる旧耐震基準のマンションです。耐震性に不安を抱える状況から空室が増加し、維持管理の限界に近づいている側面もあります。
(国交省の統計データ)
限界マンションが生まれる2つ理由
1.建物維持の限界
「建物維持の限界」は、躯体や設備などハード面の維持管理の限界です。
現在のマンションでは長期修繕計画という建物の維持計画に基づいて修繕積立金を集めることが一般的です。
実は長期修繕計画の歴史は浅く、平成4年に初めて旧建設省から策定の必要性に関するコメントが発表されました。昭和の時代は計画的な修繕という概念はあまり無く、適切な修繕積立金はいくらなのかということを深く考えていませんでした。
そのため長期修繕計画が策定されていないマンションは、修繕積立金の残高が不足し、必要な修繕が出来ない状況に陥っています。
また、維持管理では無く、建替えに舵を切るマンションもあります。
しかしながら、多くのマンションでは建替えを想定した資金は集めていません。現在、建替えが進んでいるマンションは敷地(建ぺい率や容積率)に余裕があり、建替え後に増えた住戸を売却することで建替え資金を捻出しています。
余裕が無いマンションは建替えには資金が足りず、維持管理が難しくなっていきます。
このように適切な修繕積立金を集めていない、建替えるにも資金捻出の方法が無いマンションは維持管理の限界に近づいています。
2.コミュニティ維持の限界
マンションを維持していくには、管理組合運営が必須です。
管理組合とは区分所有者で組成される組織であり、マンション共用部の維持管理の主体となります。
築年数が進んでいくと、当然、居住者も高齢化していきます。高齢化が進みますと、管理組合の役員を担える住戸が減っていきます。
昔の団地タイプのマンションであれば、エレベーターが無く、階段で上り下りすることが難しくなった高齢の住戸は別のマンションに移り住み、住戸を賃貸にだしてしまうことが多々あります。
新しく入居した賃貸の方は区分所有者では無いため、管理組合役員になることが出来ません。
管理組合運営が停滞してしまうことは、マンションの維持管理に関する検討が停滞することを意味しています。検討が停滞し、適切な維持管理がなされなくなってしまうと空室が増え、スラム化が始まります。
限界マンションにならないための防止策
限界マンションにならないための防止策として2点「マンションの将来像の共有」と「専門会社の活用」を挙げさせていただきます。
1.マンションの将来像の共有
このマンションをどのようにしていくのかを早い段階で話合い、将来計画を策定することです。
長期修繕計画の策定についてもこれに該当いたしますが、出来るだけ早い段階で考えていくことが良策です。
遅くなればなるほど、資金を貯める期間が短くなるため、修繕積立金を大幅に増額する必要があるなど、負担感が大きくなっていきます。
建替えに関してもどの程度の時期で検討するのか、将来像を早めに共有し、毎年の総会などで共有していくべきでしょう。
2.専門会社の活用
管理会社を含め、専門の会社に意見や提案を求めることです。大規模な団地などは役員の担い手がある程度確保できますが、小中規模のマンションは難しくなってきます。
専門的な知識、他マンションなどの事例、法令の動向など、専門の会社から得られる情報を基に将来像をしっかりと描くことが望ましい形と思います。
限界マンションとこれからの管理組合
人口減とマンション供給の状況から、これから限界マンションが増加していくことが想定されます。分譲マンションは所有者皆様の資産であるということを改めて認識していただき、早めに対応を検討していきましょう。