マンションの機械式駐車場の対応事例!理事会が問題解決のために行った事

マンションの機械式駐車場

マンション管理新聞第993号にて、千葉県の57世帯のマンション(2007年築)の機械式駐車場の対策によるマンションの修繕積立金の改善事例が紹介されていました。

機械式駐車場は土地面積が狭い場所でも駐車スペースを有効活用でき、マンション内に多くの駐車スペースを確保するというメリットがあります。

しかし一方で、機会式駐車場のは維持コストが高いという問題を抱えており、修繕積立金ガイドラインでも機械式駐車場は修繕工事に多額の費用が必要と明記されているほどです。

この管理組合はどのような問題を抱えて、そしてどのように資金計画を改善し、組合の負担を軽減したのでしょうか?

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有名無実化していた長期修繕計画

このマンションでは、竣工から3年目の2010年に、築25年以降にはマンション会計が慢性的な赤字になることが発覚しました。

今まで発覚しなかったのは分譲時に作成された長期修繕計画に計上されていた支出と収入が別々記載されており、問題が分かりにくくなっていたためです。

この問題に2010年に就任した理事長が気付いたのです。

しかも、一般的に長期修繕計画は35年サイクルであり、大規模修繕は12年サイクルです。つまり3回目の大規模修繕は含まれておらず、それを含めるとさらに赤字が悪化します。

さらに驚くべきことに、長期修繕計画には機械式駐車場の維持・更新に掛かる費用が計上されていませんでした。

25年までで維持費5882万円、更新費が3900万円かかるにもかかわらずです。

修繕積立金は段階値上げ方式でしたが、それでも足りない長期修繕計画になっていました。長期修繕計画は有名無実化していたのです。つまり、分譲時の計画のときからマンションの資金計画は破綻していました。

この問題の解決を計るべく手をつけたのが機械式駐車場の改善です。

マンションの資金問題解決のために

機械式駐車場のコストだけで約9782万円のコストが掛かります。これを削減することができれば、マンション会計の改善に大きく寄与します。

理事会が取った対応は以下の2つです。

1つは機会式駐車場の一部は残すが他は利用しない。つまり、修繕や機械の更新は行わないと決定したのです。

19基ある駐車場のうち13基は利用を停止することとし、これによって計算上約6700万円の削減です。

しかし、このままでは駐車場が利用できない世帯が発生してしまうため、マンションから100mほどのところにある敷地を管理組合で購入し、そこに平置きの駐車場をつくりました。

これにかかった費用が4900万円です。

この一連の対応で計算上では1800万円ほどの利益が組合に生まれます。

実際は機械式駐車場を利用しないとすることで、管理組合に掛かる経費が減るため、削減は時が経つほどに大きくなるはずです。

機械式駐車場の利用停止と平置き駐車場建設のために

これだけの対応をするためにこちらの組合は管理組合を法人化されています。また管理会社も変更(リプレイス)しています。

そしても最も重要な「機械式駐車場の一部停止と駐車場の移設」については各区分所有との合意形成は一人一人にしっかりと説明をされたそうです。

「57戸という規模が合意を得るのに幸いした」

との理事長コメントが記載されていましたが、大変な苦労だったと思います。

理屈では総会で決議されれば、この機械式駐車場の利用停止と平置き駐車場建設はできます。

しかしそれでは組合にしこりが残ってしまうはずです。

マンションの改善のために丁寧な対応をされたであろうことが想像できます。

なお、この取り組みの中で駐車場の料金も改定されています。200万円の増収につながり、それは修繕積立金に充当されているとのことです。

まとめ

これだけの対応をすることはとても大変な苦労であったと思います。機械式駐車場の利用停止や、管理組合法人での土地購入など大きな決断と合意が必要です。

ここまでの取り組みは難しいと思いますが、マンションの管理費や修繕積立金の問題改善のためにできることはあるはずです。実際に管理費を100万削減でき、修繕積立金に100万上乗せできるのであれば、実質200万円の経済効果があります。

マンションの管理はどうしても人任せになってしまいがちですが、その分改善できる取り組みが多くあります。

マンションは大事な財産です。それを守っていくのは区分所有であるご自身はないでしょうか?

記事監修

マンション管理士:古市 守(ふるいち まもる)

管理会社変更をはじめとするマンション管理組合のコンサルティング、管理計画認定制度支援や事前審査担当、自治体のマンション調査、マンション管理コラムの執筆・監修などで活動。

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