民泊検討会の対応事例と今後の民泊の可能性
先日のマンション管理新聞にて、厚生労働省と官公庁が主体となって行っている第6回民泊サービス検討会のことが記事になっていました。
この第6回の検討会では管理組合法人ブリリアマーレ有明Tower&Gardenの理事長を検討会に招きヒアリングが行われています。
管理組合法人ブリリアマーレ有明Tower&Gardenの民泊対応事例
このヒアリングの中で理事長は、管理組合側から見た民泊の問題点を4つ提起しています。
- 静謐で穏やかな住環境を破壊する
- セキュリティの懸念がクリアできない
- 区分所有者全員が払う管理費にフリーライドしている
- マンションは不特定多数のゲストを受け入れる構造になっていない
こういった課題があるために、「分譲マンションで民泊を行うには管理組合の許可が必要ということを手続き上必須にしてもらう」と回答されています。また「個々の管理組合で規約を作るのは難しいため、雛形を作成してほしい」とも言及されています。
なお、ブリリアマーレ有明Tower&Gardenでは、管理規約に民泊に関する規約を追加しており、その条文が紹介されていたので、こちらに引用させていただきます。
4.区分所有者は、理事会の決議で特に承認された場合を除き、専有部分を、直接・間接を問わす「シェアハウス」に供してはなら ない。なお、本規約にて「シェアハウス」とは、専有部分の全部または一部(以下、単に「専有部分」という。)の利用形態が以下に 掲げる各項のいずれかに該当する場合における当該専有部分の長期・短期の利用様式をいう。
(1)専有部分の居室(キッチン、トイレ及び風呂を除く。以下本項にて同様。)の数(以下 「室数」という。)を超える数の者(区分所有者、区分所有者の親族、区分所有者からの賃借人、上記賃借人の親族(以下あわせて「縁故者」という。)を除く。)による継続的な居住、宿泊または滞在。
(2)室数を超えない数の不特定の者(縁故者以外の者でいずれの縁故者も常時かつ明確に住所、氏名及び職業(就業就学先を含む。)を把握していない者をいう。)による居住または宿泊。
(3)縁故者を含む複数の者による居住、宿泊または滞在で、直接・間接を問わず、複数の者から居住、宿泊または滞在の対価を徴収することを予定しているもの。
(4)前各号のためにする改築・改装。
5.理事長は、理事会の承認がないにもかかわらず、専有部分がシェアハウスに供されていると認めたときは、当該専有部分の区 分所有者に、専有部分をシェアハウスに供することを 中止するよう請求することができる。専有部分の区分所有者または占有 者が合理的な理由 を示さず第12条第7項の協力を拒んだ場合も同様である。
6.理事長は、専有部分がシェアハウスに供されているかどうかの事実を確認するため、随時、任意の区分所有者に対し専有部分 の利用状況について口頭または書面で照会をすることかできる。
7.前項の照会の結果、専有部分の外観、近隣住戸の居住者または専有部分に出入りする者等から任意に聴取した事項、各種媒 体上で見分した賃貸情報などから合理的に判断して専有部分がシェアハウスに供されていると推認した場合、理事長は、理由を 告げて、当該専有部分の区分所有者または占有者に対し、専有部分がシェアハウスに供されているかどうか実地に見分するため理事長及び理事複数名が専有部分に立ち入るのを認めるよう協力を求めることができる。
引用:管理組合法人ブリリアマーレ有明Tower&Garden ご提出資料(http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11121000-Iyakushokuhinkyoku-Soumuka/0000114119.pdf)
そして、この規約改正後、サービス提供者であるエアービーアンドビーに募集取り下げの要請を行い、現在はブリリアマーレ有明では民泊サービスは無くなったと紹介されています。
民泊に不安を感じている方は是非参考にされることをお勧めします。
管理会社による民泊の対応
東急コミュニティは管理組合から規約変更の相談があれば支援するサービスを開始しています。
積極的に民泊を禁止しようということではないようです。ただ、民泊に対して不特定多数の方がマンションを出入りすることになるので、セキュリティ面で不安の声を持つ方が多いのは事実であり、そのような組合をサポートするようです。
同じように住友建物不動産サービスも民泊に対して対応を開始しており、民泊を禁止する管理規約の提示を始めています。
住友建物不動産サービスが提示している規約には
「不特定多数を対象に宿泊や滞在の用途に供してはならない」
と記されており、「専ら住宅なら民泊はできない」という国交相の意向をより明確に示したものになっています。
また同社が売り出しているマンションにはこの民泊禁止の規約が盛り込まれているマンションもあります。
今後の民泊の可能性
ブリリアマーレ有明は豪華設備を有するタワーマンションであり、区分所有者の方はその設備・住環境を買っているという見方もできると思います。
このようなマンションでは民泊という形で不特定多数の方が出入りするようになると、静かな住環境が壊されてしまいかねません。
実際にそうした側面があるので、管理規約を変更する特別決議も承認されたのではないでしょうか。
セキュリティの問題はどのマンションでも考慮しなければならない問題ですが、特別な設備もなく、比較的規模の小さなマンションであれば、ブリリアマーレ有明が抱えるようなリスクは少ないはずです。
マンションの収入源は限られています。これからのマンションは民泊を活用することで管理組合は新たな収入源を得られるかもしれません。
不動産大手の大京は特区に指定されている大田区で積極的に民泊に参入するとしています。空き家の戸建てを購入し、それを民泊として貸し出し、資産価値が上がれば転売する、という新ビジネスをスタートします。
実現の可否は棚に上げて、例えば、民泊を利用する区分所有者は一定の手数料を組合に収めるなどすれば、マンションの収入を増やすことができます。
民泊と言うと管理組合側の視点ではデメリットに目が向きがちですが、新たな可能性を考えてみる事も必要かもしれません。
民泊代行を行っている会社もありますので、一度相談してみる価値はあるのではないでしょうか。