マンションの役員は輪番制と立候補制どちらがよいのか?

マンション役員は輪番制と立候補制

マンション管理組合の役員(理事・監事)の選出方法には「輪番制」と「立候補制」の2通りがあります。「輪番制」とは順番制ともいわれ、原則として区分所有者が順番で役員になっていく方法です。

任期1年毎に役員が全て入れ替わる方法と、任期を2年として1年毎に半数だけを入れ替える方法があります。「立候補制」とは、私がやりますと手を挙げた人が役員を務める方式で、任期は1年が普通です。

いずれにしても、毎年行われる通常総会に議題として上程され、議決の上、選任されます。

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輪番制、立候補制、どちらが多いのか?

国土交通省が実施した平成25年度「マンション総合調査」によると、輪番制が72.7%、立候補制が27.3%と、圧倒的に輪番制が採用されています。かねてから国は、公平性と区分所有者の主体性を理由に、輪番制を推奨しています。

輪番制と立候補制の割合

輪番制、立候補制、それぞれのメリット・デメリット

輪番制のメリットとデメリット

輪番制のメリットは、やはり、公平性という点でしょう。

7割以上の管理組合で役員は無報酬であり、自分の時間を捧げて組合活動に取り組んでいるいわばボランティアです。このボランティア活動によって、入居者は平穏な生活を享受していると考えると、やはり、区分所有者の皆が等しく、役員として活動するのが公平である、というのは一理あります。

これに対してデメリットは、短期で役員が変動するために、事業(活動)の連続性に欠ける憾みがあり、時間をかけて検討が必要な案件がなかなかまとまらない、毎年一から出直しになってしまいがちという点などです。

立候補制のメリットとデメリット

立候補制のメリットは、マンション管理に高い意識をもった人が立候補し、一定期間重任を続けますから、区分所有者からの信頼が厚く総会における意思形成が比較的容易に進み、重要案件(例えば大規模改修)を成し遂げられるという点にあります。

これに対してデメリットは、一旦信頼を得て長期就任した現役員らに欠員が出た場合に、新たに手を挙げて役員活動に参画してくれる区分所有者が出にくいという点です。

メリットとデメリット

立候補制を推奨する3つの理由

輪番制と立候補制には、それぞれにメリットとデメリットを上げることができるのですが、国の意向とは異なり、マンション管理の目的を十分に達成するためには、断然、立候補制が優れていると考えます。

1.輪番制では、何も決まらないことも可能性がある

分譲マンションは新築、あるいは築浅の時には大した問題もなく、組合活動も平穏に推移していきます。毎年、輪番制により役員が替わることは、区分所有者間のコミュニケーションを深めるきっかけにもなります。

国がいうように、区分所有者の主体性を生かす一つの方法なのかも知れません。しかし、マンションが年を経ると、毎年様々な問題が噴出し、様相は変わっていきます。

ある大きな問題、その代表的な問題は大規模修繕や違法なペット飼育問題などですが、その問題についておそらく1年で結論が出ることはありません。

しかし、役員になった人、特に理事長は自分の理事長時代に何かを残したい、そう 思うケースが多いようです。

そのため「理事長を務める理事会」の提案に意見を述べる人に対しては「良い意見を言ってくれた。議論を尽くそう」とはならず、「何で反対するんだ」と焦り、 憤ります。任期が1年しかないからです。

意見を言った人は、マンションのことを考えて色々な角度から検討しておいた方が理事会の提案の正当性を高めると思っていたかも知れないのに…。

しかし、結局、何も決まらず、次の年、意見を言った人が理事長になりました。

すると、今度は、前理事長が新理事長に異議を唱えまくります。前年の「理事会」に意地悪(?)をしたと思っているからです。

こんなことが繰り返されてしまうと、重要問題は何も決まらないでしょう。

2.立候補制の方が区分所有者の意向が反映されやすい

立候補制により作られた役員会は、輪番制のように、自身が作成した提案に対する意見や異論に神経質になる必要がありません。

理屈では、来年再選される保証はないわけですが、ほとんどの区分所有者は、自らボランティアをかって出てくれた役員達に敬意を表し、また、大変なことはお願いしたいとして、現役員は再選され、本人の事情が許せば5年、10年と役員を続けます。

役員活動の連続性が保たれます。ですから、総会で反対意見・修正意見があれば、なにも無理をして今年決めなくてもいいのです。

「ご意見を踏まえて来年再提案します」「またご苦労をおかけしますが宜しくお願いします」。それを1~2回やれば、大体、意見が集約され、区分所有者の意向が反映された良案が可決されたとなるわけです。

長く役員を務められる人達は、管理会社の扱いにも慣れて、管理会社に代替案や修正案を考えさせることもできるのです。

3.難しい大規模修繕の決定

多額の資金を支出する大規模修繕の決定は、立候補制による理事会でも簡単なことではありません。初めて建物診断をしてから、4年・5年協議して、やっと工事が実現、ということもあります。

しかし、それは、難しい案件ゆえに理事会での協議に時日を要し、また、理事会の案を区分所有者集会(工事説明会)を開催して披露し、そこでの意見を理事会にフィードバックし協議を重ねるからです。

これに対して、輪番制では、理事会でこのような長期間の審議ができませんから「大規模修繕委員会」といったものを役員会とは別に立ち上げねばならない事態となります。

そして、その委員会の決定と役員会の意向に齟齬が生ずるなど、また、本題から外れた面倒な問題が発生したりします。

立候補制のすすめ

どんなマンションでも必ず何度か直面する難しい問題を上手く解決する、それが立候補制をお勧めする一番の理由です。株式会社の役員は、株主の持ち回りなどにはせず、経営に秀でた人を選任するのが普通です。

それと同様に、マンションにおいても、管理に対して気概を持ち、ボランティア精神に溢れた方に役員を務めていただいた方が、結局は、区分所有者全員の幸せに繋がるのです。
(※理事会の方に役員報酬を払う組合様もいます。詳しくはマンションの役員報酬を参照ください)

輪番制を立候補制に替えるタイミングについては、多くは、輪番制の弊害に辟易して、あるいは、難しい問題に何年も結論が出ずに、区分所有者が「もう、いい加減、何とかしようよ」と感じ始めた時であろうと思います。

その時が立候補制を検討する時ではないでしょうか。

記事監修

マンション管理士:古市 守(ふるいち まもる)

管理会社変更をはじめとするマンション管理組合のコンサルティング、管理計画認定制度支援や事前審査担当、自治体のマンション調査、マンション管理コラムの執筆・監修などで活動。

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