こんな会社にマンションの管理は任せたくない

信頼できない

先日の新聞で非常に興味深い記事を見つけたのでご紹介します。

その内容は管理会社(以下:旧管理会社)に勤めていた部長が、退職後、新たな管理会社(以下:新管理会社)を設立し、フロントマンと共謀して旧管理会社の受託物件の4割をリプレイス(管理会社の変更)で奪ったというものです。

この状況をうけて、旧管理会社は5000万円の損害賠償請求訴訟を元部長に対して起こしました。

この裁判において、元部長は

『管理会社を変更したのはすべて組合側の判断であり、その結果自社が選ばれた。また旧管理会社には不透明な決算があり、そのせいである』

と主張しました。しかし裁判では

「著しき審議を欠き、自由競争として許容される範囲を逸脱したものと言わざるを得ず、不法行為にあたる」との判決が下され、元部長に対し損害賠償として900万の支払いが命じられました。

ここまでの内容を受けると、裁判の判決は妥当であり、どう考えても部長側に非があるように思えます。旧管理会社に在籍していたころから、管理組合に声を掛けて、自分が立ち上げる新管理会社に誘導しているのは、判決通り自由競争の範囲を逸脱していると私も思います。

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管理会社変更の裏側にあったもの

裁判では部長が敗訴しました。が、管理組合が旧管理会社から新管理会社へ変更した背景には、その部長が「新しい管理会社を立ち上げたから」というだけではない理由があったようです。

この部長は旧管理会社に在籍しているころから、管理組合に対して「不透明な決算がある」と吹聴して回っていたようですが、実際に用途不明な『仮払金8000万』という不透明な決算項目が、この旧管理会社には存在していました。

また、マンション管理の構造として、エレベータの設備や定期清掃などは下請け業者に委託する仕組みになっているのですが、旧管理会社は業者への委託費を3割削減しようとし、交渉がまとまらなければ支払いをしないなど、横暴な態度をとっていたようです。

そのため、点検が滞りそうになるなどの事態も発生していたようです。それだけではなく、管理費や修繕積立金の引き落とし業務にも問題を抱えていたようです。

部長たちが退職して新管理会社を立ち上げたのは、旧管理会社が提供しているマンション管理や会社の方向性に納得できなかったではないかと思います。

裁判の判決でも「(不透明な決算や業者への対応についての部長の意見は)虚偽であるとは言えない」と認定されています。

部長は管理組合のためを思い、自分の正義を貫いたのかもしれません。それに賛同した管理組合が新管理会社に変更したのかも知れません。

旧管理会社と部長のそれぞれの立場

残念ながらどの管理会社は明記されていませんが、この「旧管理会社」はマンションの管理を任せても大丈夫と思えるような会社ではありません

おそらく下請け業者からカットした3割の委託費は自分たちの懐に入れるでしょう。「組合の修繕費用がどうしても足りないなから、なんとか協力していほしい」そんな想いは一切なかったはずです。

そのような管理会社のもとでは下請け業者も良いサービスを提供するはずがありません。

どう考えても良い会社ではありませんので、むしろ部長たちが立ち上げた新管理会社に変更されて当然とも言えると思います。

一方で部長の対応にはある程度は理解はできるものがあります。このような管理を提供する会社であれば、自分が立ち上げた管理会社のほうが良い管理を提供できると思ったのでしょう。

ただ、そのやり方が決してフェアではありません。旧管理会社を会社を悪く言うことで自分たちを持ち上げて、自社の受託物件としている。

例えば、この管理会社の変更には競争はあったのでしょうか?通常、管理会社を見直す際には、複数の管理会社から管理組合が選びます。

旧管理会社の物件から4割を受託しているとのことなので、自社に流れるように仕組んだことは明白です。一般的な管理会社の見直しのように複数社で競っていれば、4割も受託できないでしょうし、損害賠償の訴訟が起こされることもなかったでしょう。

マンション管理に携わる身として、旧管理会社にも新管理会社にも管理を任せたいとは私は思えません。

自分たちのサービスを利用してもらうお客様(管理組合)のことを考えない管理会社、そのような会社に未来はあるのでしょうか?

記事監修

マンション管理士:古市 守(ふるいち まもる)

管理会社変更をはじめとするマンション管理組合のコンサルティング、管理計画認定制度支援や事前審査担当、自治体のマンション調査、マンション管理コラムの執筆・監修などで活動。

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