大規模修繕の業者の選び方とそれぞれの特徴
大規模修繕をする際の業者をどのように選定していけばいいのでしょうか?その際の選び方のポイントを以下の項目に分けてご紹介します。
まず
- 大規模修繕をする際の業者選定のポイント
として、管理組合や修繕委員の関与度の観点について触れます。そして、具体的にそれぞれの大規模修繕の各方式として
- 責任施工方式とそのメリット・デメリット
- 設計監理方式とそのメリット・デメリット
- コンストラクション・マネジメント(CM)方式とそのメリット・デメリット
- プロポーザル方式とそのメリット・デメリット
について、触れていきたいと思います。
大規模修繕をする際の業者選定のポイント
業者選定や工法を考えるにあたり、まずは管理組合がどの程度関与していくかを考えておく必要があります。
都度判断を求められる立ち位置なのか、それとも月1程度の理事会や大規模修繕委員会で進捗や方向性を確認することでいいのか、それぞれの立ち位置で変わってくると考えられます。
大規模修繕工事に管理組合がどの程度関与するか
管理組合としてどの程度大規模修繕の進行に関与するかも方式の選択において大きく影響します。
特に自主管理を行い、普段からマンションの管理状況をしっかりと把握しているマンションは、自分たち主体で進めることも考えられます。
一方で、普段の理事会や総会運営もほぼ管理会社任せで、マンションの管理状況についても余り把握していない状況になると、大規模修繕工事に深く関与することも難しくなってきます。
管理組合が関与するにあたっての主なメリットやデメリットは以下のようなものが考えられます。
管理組合が深く関与するメリット
関与することにより、工事の状況を逐一把握することが出来ます。工事業者、設計監理の専門家の動きやスケジュール通りの進行か、また工事が適切に行われているかなどが分かるかと思います。
管理組合や大規模修繕委員が会合時に報告される状況以上に、進行のチェックを詳細に行えるため、区分所有者への工事状況のフィードバックや説明も的確に行え、信用度が高まる事も想定されます。
管理組合が深く関与するデメリット
逆にデメリットとしては、関与すればするほど理事や修繕委員の労力がかかる事です。
普段は別の仕事をしており、兼務であることも多い管理組合の理事や大規模修繕委員にとって負担となりがちです。さらに、理事会や大規模修繕委員会での議論が進まないと工事の延期も想定されます。
また工事業者や監理を行う専門家に対して口出しをすることになると、工事の妨げになり、進行に支障を来してしまう事にも注意が必要です。
取るべき大規模修繕の工事方式
管理組合や修繕委員としての立ち位置や大規模修繕に臨む姿勢が決まれば、具体的にどのような工事方式が適切か把握しやすくなります。次からは具体的な工事方式について見ていきたいと思います。
責任施工方式とは
責任施工方式とは、マンションの管理会社や施工会社に修繕工事を委ねる方式です。
例えば、建設当初からのお付き合いである施工会社や、長年丁寧なメンテナンスを行っている施工会社に修繕を任せるマンションは少なくありません。その普段の修繕の流れの中で、来るべき大規模修繕についても任せてしまう方式です。
責任施工方式のメリット
責任施工方式のメリットとして、一社を簡単に選定できるケースとして、修繕を発注する側(以下、発注者)にとって、あまり心配事もないし手間もかからず楽であることが挙げられます。普段のメンテナンスでその施工会社の特徴や、実績、または担当者の人となりなどが分かっている会社であり、普段からのお互いの信頼関係も築けていることが挙げられるでしょう。
さらに、継続的にメンテナンスを行っているため、マンション全体を把握しており、大規模修繕時に特にやった方がいい修繕を見極められることも挙げられます。
責任施工方式のデメリット
責任施工方式のデメリットとしては、発注者が選んだ一社にすべてを任せる方式であるため、予算や費用で折り合いがつかない可能性もあります。一番マンションの事をわかっている施工会社とも言えるため、上乗せして提案をしてくる可能性もあります。
設計監理方式とは
設計監理方式とは、設計監理を行う会社(以下、設計監理会社)が施工会社の工事をチェックし、手抜きのない適切な修繕工事を行わせる方式です。設計監理会社として、施工会社とは別に建築士が在籍する建築設計事務所や建設会社等を選ぶこととなります。
設計監理方式のメリット
第三者的立場の設計監理会社が加わることで、牽制機能が発揮されより良い修繕が行われる可能性が高い事です。この第三者の目線は発注者側からの期待も高く、人気のある方式でもあります。
またそれにより、本来は必要か不要か判断できなかった工事も的確に判断できるため、費用減に繋がる可能性もあります。
設計監理方式のデメリット
設計監理会社が自社と親密な関係にある施工会社を選ぶ場合、本来期待された第三的立場としての牽制機能が有効に機能しない可能性があります。
また、発注者と施工会社の間に設計監理会社が入るため、工事費用以外に設計監理のための費用が別途発生します。ただし、メリットに記載の費用減が上手く機能すれば、こちらも抑えられる可能性はあります。
コンストラクション・マネジメント(CM)方式とは
コンストラクション・マネジメント方式(以下、CM方式)とは、発注者と施工会社の間にコンストラクション・マネージャーが入り、施工会社をマネジメントするとともに、発注者の立場で工事を調整しながら進行する方式です。
CM方式のメリット
鉄部を塗る塗装会社や、外壁のひび割れを直す業者、給排水設備を直す業者など、マンションの修繕工事にはさまざまな業者が携ります。
それらを別々に分離発注することで、価格帯を選ぶことが出来、大幅なコストダウンが見込めます。
いわば「いいとこどり方式」と呼んでもいいと思いますが、それらを調整、マネジメントしながら工事を進めることが出来ます。
CM方式のデメリット
修繕工事の内容がCMを行う会社の担当者の力量に左右されることです。現場作業を行わないため、現場に精通していない場合、良し悪しの判断を誤る可能性もあります。
また、発注者との間に入って調整する立場のため、管理組合側の発注者との調整が中々取れない場合には、遅れによる工事計画の修正も必要となります。
終わりに
発注者側である管理組合としては安くてより質の高い大規模修繕をしたいところです。しかしながら、各方式で関与する会社が違ってきますし、また管理組合がどれほど手間や時間をかけることが出来るのかでも方向性が変わってきます。
理事会や大規模修繕委員会でしっかりと方向性を協議していくことも大切であるといえるでしょう。