管理組合は大規模修繕の談合にどう対処すべきか?効果的な対策と課題

管理組合を取り巻く環境の中で、マンションの大規模修繕工事における談合が大きな問題になっています。

手口が巧妙であり、管理組合だけでそれを見極めるのは非常に難しいのが現実です。入札や見積もりが形式上は適正に見えても、実際には施工会社同士やコンサルタントが裏で調整し、あらかじめ決まった業者が選ばれるよう仕組まれているケースがあります。

その結果、競争原理が働かず工事費用が相場より割高になり、長年積み立ててきた修繕積立金が知らぬ間に余計に支出されてしまう可能性があります。公正取引委員会による調査でも、マンション管理組合の7割以上が見積りや業者選定プロセスに不信感を抱いた経験があるとされ、談合の疑いは決して他人事ではありません。

今回はこのような大規模修繕工事における談合問題に対して、管理組合としてどのように対処すべきなのか、大規模修繕工事業者の選定にも深く関与しているマンション管理士が具体的にご紹介します。

目次
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管理組合としての初期対応はどうすればよいか?

談合を防ぐためには、管理組合が受け身にならず主体的に行動することが重要です。具体的には次のような初期対応が考えられます。

区分所有者全体が修繕工事に関心を持つこと

そもそも、多くのマンションでは住民の管理運営への関心が薄く、入札や契約内容にも無関心な傾向があります。その結果、不透明なプロセスが見過ごされ談合が温存されやすくなります。

まずは理事だけでなく区分所有者一人ひとりが大規模修繕に高い関心を持ち、議案や見積内容を注視する文化を育てることが大切です。管理組合内で情報共有を徹底し、「何かおかしい」という声を上げやすい雰囲気を作ることから始めましょう。

理事会とは別に修繕委員会を設置すること

大規模修繕のような重要プロジェクトでは、理事会とは別に「大規模修繕委員会」など専門委員会を組織し、工事内容や業者選定について検討・監視する体制を整えるのも有効です。

実際、管理組合によっては理事会の諮問機関として修繕委員会を設置し、理事会をサポートしながら計画を進めるケースもあります。委員会には有志の区分所有者や専門知識を持つ住民が参加し、複数人の目でチェックすることで透明性が高まります。

こうした内部監視の目を増やす取り組みが、談合の抑止力につながるでしょう。

大規模修繕の談合を防ぐ具体的な対策

初期対応に加えて、管理組合が主体的に講じることができる具体的な談合防止策を整理します。談合リスクを下げ、適正な工事を実現するために次のような対策を検討することが求められます。

工事費の妥当性を国交省ガイドライン等で確認する

提示された見積金額が適正か判断に迷う場合、国土交通省の「マンション修繕積立金ガイドライン」等が示す基準値と照らし合わせてみることも有用です。

国交省ガイドラインでは、長期修繕計画に基づき必要とされる修繕積立金の目安が示されており、一般的な目安として1㎡あたり月額200円台という基準がしばしば用いられます。また、70㎡の平均的なマンション1戸当たりの大規模修繕工事費用は100万~150万円程度と言われたりもします。もちろん個々のマンションの規模・築年数や設備状況によって必要額は異なりますが、あまりにも見積り工事費が高額な場合には、こうした基準と比較することで、相場とかけ離れていないか客観的な視点で妥当性を検証できます。

国のガイドラインが提示する「これだけは貯めたい」基準額と比較してみて不合理に高いと感じた場合は、その理由を業者に確認し、必要に応じて再見積もりや別業者からの見積取得を検討するとよいでしょう。

専門家によるセカンドオピニオン(第三者チェック)を受ける

業者選定や見積金額に不安がある場合は、管理組合だけで判断せず中立的な第三者の専門家にチェックを依頼することが有効です。

例えばマンション管理士や一級建築士などに見積書や工事計画を客観的に評価してもらうことで、見積り妥当性や工事内容の適正さを判断し、不正の芽を事前に摘むことが可能になります。設計監理方式でコンサルタント会社を起用している場合でも、その会社とは別の第三者にチェックを仰ぐとよいでしょう。

自治体の住宅相談窓口やマンション管理センター、独立系のマンション管理士事務所など、中立性・公共性の高い相談先も積極的に活用することが有効です。第三者の目によるセカンドオピニオンで、管理組合では見落としがちな談合サインを発見できる可能性があります。

発注方式に「プロポーザル方式」を採用する

従来主流の「責任施工方式(管理会社一括発注)」や「設計監理方式(コンサルに依頼)」だけでなく、第三の選択肢としてプロポーザル方式という方法もあります。

プロポーザル方式では、管理組合が要望を提示し各施工会社が独自の工事内容と価格をセットで提案するため、各社横並びの見積書を比較する従来方式と異なり談合による価格調整が起こりにくくなります。提案内容には工事手法や技術、施工実績、工期中の管理体制まで含まれるため、管理組合のニーズを的確に反映した提案をしてくれる熱意ある業者かどうかも判断できます。

最も優れた提案をした会社を選定できるこの方式は、談合防止だけでなく納得度の高い工事につながる方法として注目されています。

対策を講じる際に想定される課題

上記のような談合防止策を実施するにあたり、管理組合側で注意すべき課題や懸念点もあります。対策が十分に機能するよう、以下のポイントに留意する必要があります。

管理会社が責任施工方式で関与する場合のチェック強化

管理会社に工事を一任する「責任施工方式」では競争入札が行われないため、管理会社主導の見積りに対するチェック機能を格段に強化する必要があります。管理会社自身が施工業者となるケースでは、表向き関係会社から相見積もりを集めつつも、実際には管理会社の提示価格より高い金額を出すよう他社に指示して自社を最低価格に見せかけるといった手口が報告されています。

このように競争原理が働かない発注では工事内容・費用が不透明になりがちであり、談合まがいのリスクも高まります。責任施工方式を採る場合は、第三者の専門家によるチェックや相場との比較検証を通常以上に徹底することが不可欠です。

管理会社推薦以外の施工業者を選定した場合の懸念

管理会社が提案・推薦する業者ではなく、管理組合主体で別途選定した施工業者に発注するケースでは、現行の管理会社が工事に非協力的となる可能性にも注意が必要です。

実際「責任施工方式」を前提としながら管理会社以外の業者に工事を任せると、管理会社による品質管理(工事監理)が行われず管理組合側のチェック体制に不安が残ると指摘されています。

管理会社によっては、自社が受注しなかった工事に積極的に関与しないケースも考えられるため、その場合は管理組合自らが施工管理や監督の仕組みを整えるか、必要に応じて工事監理のみ別途専門家に委託するなどの対応が重要です。

管理組合側の負担増

談合を防ぐためのプロセスを強化すると、どうしても管理組合役員や修繕委員の負担は増加します。管理会社一任の場合、そうでない場合に比べて修繕委員会にとっても手間が軽減されるため、その手軽さから責任施工方式を採用するマンションも多いと推察されます。

一方で、管理組合が工事全般的に厳正なチェックや複数業者の比較検討を行うには、相応の時間と労力が求められます。役員や委員の中には専門知識に不安を感じる方もいるでしょう。

負担軽減のためには専門家の力を借りることも重要です。例えば、公益財団法人であるマンション管理センター主催のセミナー受講や、自治体のマンション管理相談、さらには信頼できるコンサルタントに部分的に相談するなどして、管理組合の知識面・作業面の負担を補完すると良いでしょう。

まとめ:適正な修繕を実現し、場合によっては管理会社の変更も視野に

以上のように、マンション大規模修繕工事の談合問題に対して管理組合が取り得る対策と課題を見てきました。繰り返しになりますが、談合は管理組合だけの努力では完全に見抜くことが難しく、第三者の知恵を借りながら透明性の高いプロセスを構築することが肝要です。

区分所有者全体の協力体制のもと、十分な時間をかけて慎重に業者選定を行い、必要であればセカンドオピニオンも取り入れる必要があります。幸い公正取引委員会や自治体もマンション修繕工事の談合問題には注目しており、相談窓口や違約金条項の整備など支援策も整いつつあります。

最後に、もし管理会社主導の責任施工方式で適正とは思えない高額な工事契約を結んでしまった場合、あるいは現管理会社と特定業者との癒着を疑わせるような状況がある場合には、現在のマンション管理会社をこのまま任せてよいのか再検討することも必要です。

必要であれば管理会社の変更も視野に入れ、より公正で誠実な管理会社への移行を検討すると良いでしょう。

適切なパートナーとともに、健全な競争原理のもとで大規模修繕工事を成功させ、マンションの安全・快適な環境と資産価値を守ることが管理組合の使命です。管理組合一丸となって対策を講じ、必要に応じた決断を下すことで、談合に負けない健全な修繕を是非実現しましょう。

記事監修

マンション管理士:古市 守(ふるいち まもる)

管理会社変更をはじめとするマンション管理組合のコンサルティング、管理計画認定制度支援や事前審査担当、自治体のマンション調査、マンション管理コラムの執筆・監修などで活動。

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