管理会社の値上げ、受け入れるべき?変更すべき? 管理組合が確認したい判断ポイントを解説

「管理委託費を値上げしたい」という管理会社からの申し入れについて、管理組合からの相談が増えています。背景にあるのは、物価高騰・人件費上昇・資材費の値上がりといった社会全体の構造変化であり、一定の値上げが避けられない局面であることは事実です。

ただし、だからといって提示された金額をそのまま受け入れる必要があるわけでもありません。一方で、単純に「値上げは困る」と拒否し続けるだけでも、管理サービスの維持に支障が生じるリスクがあります。

大切なのは「感情」ではなく「判断」です。値上げを受け入れるべきなのか、それとも管理会社の比較検討や見直しを進めるべきなのか。管理組合として何を確認し、どのような視点で判断すべきなのか、本記事ではそのポイントを整理します。

目次
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なぜ今、管理会社からの値上げ要請が増えているのか

近年、管理会社からの値上げ要請が増えている背景には、単なる企業側の事情ではなく、マンション管理業界全体を取り巻く環境変化があります。まずは、その構造的な背景を整理してみましょう。

人件費・再委託費の上昇が管理現場を直撃している

マンション管理の現場では、ここ数年でコスト構造が大きく変化しています。管理会社が特別に利益を追求しているというよりも、管理を支えるコスト全体が押し上げられている状況です。

最も大きな要因のひとつが、管理員・清掃スタッフの人件費上昇です。最低賃金は全国的に引き上げが続いており、管理員や清掃スタッフの確保コストも例外なく年々上昇しています。 そして、かつては人気職種でもあった、マンション管理員の確保自体も近年では難しくなってきており、求人をかけても応募が集まらないケースが増えています。

さらに、管理会社が清掃や点検業務を委託している協力会社(再委託先)も、同様のコスト増に直面しています。清掃業者や設備点検業者が値上げを求めてくれば、それは管理委託費にそのまま跳ね返ってきます。

加えて、マンション管理を担うフロント担当者の不足も深刻です。経験のある担当者の確保が難しくなる中、人材採用・育成コストも上昇しています。こうしたマンション管理業界を取り巻く構造的な変化は、一時的なものではなく、今後も継続することが見込まれます。

「昔の価格」を維持できないマンションが増えている

こうした背景の中で、特に問題になりやすいのが、長年にわたって管理費を見直してこなかったマンションです。

修繕積立金同様に、分譲当初に設定された管理費をそのまま据え置いてきたケースでは、当時の物価水準と現在の乖離が大きくなっています。10年・15年と見直しを行わないまま推移してきた場合、管理会社側のコストが膨らむ一方で契約価格が変わらないという状況が生まれ、現場サービスの維持が困難になることがあります。

値上げ要請は、管理会社の業績改善のためだけではなく、「これ以上この価格ではサービスを維持できない」という現実を反映している場合もあります。その点は、管理組合として冷静に受け止める必要があります。

値上げを受け入れる前に、管理組合が確認したいポイント

値上げ要請を受けた際に重要なのは、感情的に反応するのではなく、「何が、どの程度、なぜ上がるのか」を整理して確認することです。ここでは、管理組合として最低限確認したいポイントを紹介します。

値上げ理由は具体的に説明されているか

まず確認したいのは、値上げを求める理由が具体的に示されているかどうかです。「コスト全体が上昇しているため」という一言だけではなく、どの費目がどの程度上昇しているのかを確認することが大切です。

たとえば、管理員人件費・清掃費・エレベーターや設備の点検費・火災保険料・電気代・法改正対応コストなど、内訳を示してもらうことは管理組合として当然求めてよいことです。

「一律●%アップ」という提示だけで具体的な説明がない場合は、内訳の説明を求めることをお勧めします。管理組合として疑問点を確認することは当然の対応であり、その説明姿勢も、管理会社を評価するうえで重要なポイントになります。 

サービス内容や体制に変更はないか

値上げと同時に、サービスの内容や体制も変わるケースがあります。「管理員の勤務時間を短縮する」「清掃の頻度を週2回から週1回にする」「マンション内外の巡回回数を減らす」といった変更が、値上げの申し入れと一緒に提示されることがあります。

こうした場合は、単純な値上げではなく「値上げ+品質低下」のセットです。コストが上がる一方で、管理体制や対応品質が変わるのであれば、その内容が本当に妥当なのかを慎重に確認する必要があります。 

担当フロントの変更が頻繁に行われている、引継ぎが十分でないといった状況が続いている場合も、同様に確認が必要なポイントです。

同規模マンションと比較して適正水準か

値上げ後の管理委託費が、市場相場として適正な水準かどうかも確認すべき点です。マンションの規模・戸数・設備内容・管理仕様によって委託費の水準は異なりますが、同程度の規模のマンションと比較することで、おおよその相場感をつかむことができます。当社のコラムでも、管理費の調査結果等を掲載していますので、参考に出来ると考えています。

複数の管理会社に見積もりや提案を依頼することは、必ずしも「管理会社を変更する」という意味ではありません。むしろ、「現在の委託費や管理仕様が適正かどうかを確認するための比較検証」と考える方が自然です。当社へも「相見積もりをお願いしたい」という要請も増えています。

比較検討することで現在の管理会社のサービス内容を改めて評価できることもありますし、交渉の材料にもなります。

ただし、「安ければよい」という方向には注意が必要です。管理委託費を下げる代わりにサービス水準が落ちれば、長期的にはマンションの資産価値や住環境に影響します。コストと品質のバランスを見ることが重要です。

「受け入れるべき値上げ」と「見直しを検討すべきケース」の違い

すべての値上げを拒否すべきというわけではありません。一方で、説明や対応次第では、管理会社の見直しを検討すべきケースもあります。ここでは、その判断の目安を整理します。

受け入れを検討すべきケース

値上げの受け入れが合理的な判断となるケースもあります。以下のような場合です。

たとえば、人件費上昇や再委託費増加などの具体的な根拠が丁寧に説明されており、サービス内容や管理体制にも大きな変更がないケースです。

また、値上げ後の水準が同規模マンションと比較して著しく高くなく、担当フロントの継続性や対応品質にも大きな問題がないのであれば、値上げを受け入れることが合理的な判断となる場合もあります。

こうしたケースでは、値上げを受け入れることが管理組合にとっても合理的な選択です。「値上げを受け入れる=管理組合が損をする」ではありません。適正な対価を支払って管理の品質を維持することは、長期的にみてマンションの価値を守ることにつながります。

管理会社との関係を安定させることは、日常の管理運営においても、大規模修繕などの重要な場面においても、管理組合にとってメリットがあります。

管理会社変更を検討した方がよいケース

一方で、値上げ理由について具体的な説明がなく、質問しても納得できる回答が得られない場合には注意が必要です。また、値上げ幅が同規模マンションの相場と比較して著しく高いにもかかわらず、その根拠が不明瞭なケースでは、管理組合として慎重に判断する必要があります。

さらに、値上げと同時に管理員時間の削減や清掃頻度の見直しなど、管理体制やサービス水準の低下が見られる場合や、以前から対応品質への不満が蓄積している場合には、現在の管理体制そのものを見直す必要が出てくるかもしれません。

加えて、他社との比較検討に対して極端に消極的であったり、担当フロントの変更が頻繁に続いていたりする場合には、長期的な管理の継続性という観点からも、管理会社変更を含めた比較検討を行う意義が高まります。

管理会社の変更や比較検討は、現在の管理体制を見直すための正常なプロセスのひとつであり、管理組合が主体的にマンションの管理を考える上で、正当な選択肢のひとつです。ただし、感情的な判断ではなく、客観的な事実と比較に基づいて検討することが大切です。

管理会社変更を進める際に注意したいこと

実際に管理会社変更や比較検討を進める場合には、価格だけに目を向けるのではなく、管理体制全体を見ながら慎重に判断する必要があります。

「安さだけ」で選ばない

もし管理会社の変更を検討する場合、候補先を選ぶ際に「委託費が安い」だけを基準にすることは避けるべきです。

管理の品質、担当フロントの体制、引継ぎの丁寧さ、緊急時の対応力、そして長期的な継続性など、こうした要素を総合的に評価することが必要です。安さだけで選んだ結果、管理水準が落ちて後悔するというケースは少なくありません。仕様の比較と金額の比較を合わせて行うことが重要です。

理事会だけで進めない

管理会社の変更は、区分所有者全員に影響する重要事項です。理事会が単独で進めるのではなく、管理組合全体として情報共有・合意形成を丁寧に行うことが求められます。

総会での決議が必要なことはもとより、説明会や管理会社選定時にプレゼンテーションの機会を設けるケースも多くなっています。そして、区分所有者に対してわかりやすい比較資料を提示することが、円滑な意思決定につながります。

「なぜ変更を検討したのか」「何を比較したのか」「どのような点で判断したのか」を透明性を持って説明できるようにしておくことが重要です。

まとめ|管理組合に求められるのは「感情」ではなく「判断」

物価上昇・人件費高騰・人材不足といった構造的な変化は今後も続く可能性が高く、管理委託費の値上げ要請はこれからも続くことが考えられます。

「値上げは絶対に認めない」という姿勢は、長期的には管理サービスの質低下や、管理会社からの契約解除という事態につながりかねません。一方で、説明のない値上げや過度な値上げを言われるままに受け入れる必要もありません。

大切なのは、管理組合として判断の軸を持つことです。値上げ理由の確認、サービス内容の精査、相場との比較、そして必要であれば複数社での検討。このプロセスを経た上での判断であれば、受け入れる場合も、変更を選ぶ場合も、管理組合として責任ある意思決定といえます。

まずは現在の管理委託内容や管理体制が、自分たちのマンションにとって本当に適正なのかを確認するところから始めてみてください。 その確認作業が、感情ではなく判断に基づく、適切な管理組合運営への第一歩となります。

記事監修

マンション管理士:古市 守(ふるいち まもる)

管理会社変更をはじめとするマンション管理組合のコンサルティング、管理計画認定制度支援や事前審査担当、自治体のマンション調査、マンション管理コラムの執筆・監修などで活動。

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