管理会社選定時に管理組合が考えておきたい検討ポイント6選

マンションの価値と快適な居住環境を維持するために欠かせないのが、信頼できる管理会社の存在です。管理組合の中には、管理会社の見直しや変更を検討することがありますが、その際に何を基準に選べばよいのか迷う方も多いのではないでしょうか。
この記事では、管理会社を選定する際にぜひ押さえておきたい重要なポイントを解説します。単に金額だけではない「管理の質」にも注目しながら、委託先管理会社の確認とともに、今後の管理会社選びに役立つ具体的な視点を紹介します。
その1:管理委託費等の金額面を正しく比較する
まず、管理組合として一番気になる管理委託費等支出面についてです。具体的には以下の点に注意する必要があります。
「総額」だけでなく「内容」で比較を
管理会社を選ぶ際、最も目に入りやすいのが「管理委託費」の金額です。しかし、「安いから良い」「高いから優れている」とは一概に言えません。重要なのは、管理組合にとって、価格に見合ったサービス内容かどうかが重要といえます。
たとえば、清掃回数や管理員の勤務時間、点検の頻度、緊急対応の有無など、サービスの中身を細かくチェックする必要があります。複数社の見積書を並べて、同一条件で各項目ごとに比較する「比較表の作成」が有効です。
清掃回数についても、多すぎないか、または少なすぎないか、管理員の勤務についても適切な頻度となっているかなどは重要な視点となります。
管理委託費以外にかかる費用も見逃さない
また、管理委託費の他にも管理費として支出されるものの中には「修繕費」「法定点検費用」「火災保険料」などの名目で費用が発生する場合があります。これらを含めたトータルコストを見るとともに、ほかに管理組合独自の費用が発生しないかも見ておく必要があります。
これらを十分検討する事によって、管理組合として予期せぬ支出を避けることも可能です。

その2:管理会社の経営方針や姿勢を見極める
次に、長年お世話になる管理会社の姿勢も重要な視点と言えます。具体的にはどのような点に注意すればよいのか解説します。
「営利優先」か「居住者重視」か
管理会社の方針は、日々の対応や将来の提案内容にも大きく影響します。たとえば、営利を最優先する会社は、必要性の低い工事を提案してくることがあるかもしれません。一方で、管理組合の声を丁寧にくみ取る会社は、将来の資金計画や修繕時期の提案にも慎重になるでしょう。
管理会社の提案書や対応の仕方、説明会での質疑応答などから、「組合と共に歩む姿勢」があるかどうかを見極めることが大切です。
特にマンション管理は長期的な視点で考えていく事が非常に重要です。管理会社が短期的な利益目線ではなく、長期的な管理組合の満足のための視点を持っているかどうかは見ていきたい所でしょう。
担当者任せにせず会社全体の組織体制も確認
後述するフロント担当者の質に左右される部分もありますが、会社全体の組織体制や内部監査機能の有無もチェックポイントです。担当者が変わっても一定の品質を保てる体制が整っているか、またはフロントの上司や支店長がどのような方なのかなど、確認しておくことも望まれます。

その3:フロント担当者のやる気とスキルを重視する
日々管理組合と向き合うフロント担当者の存在が非常に重要になってきます。中でも以下のような点について確認しておくことも必要です。
管理組合と信頼関係を築ける人材か
管理会社選定において、実質的に最も重要な要素が「フロント担当者の能力と姿勢」です。この担当者が理事会や総会での調整、日々の連絡、トラブル対応、修繕計画の立案などを担うからです。
実際に面談する場合や理事会等においては、過去の対応事例や得意分野、トラブル時の対応方針を質問してみましょう。「この人に任せたい」「安心して任せられそう」と思えるかどうかがポイントです。
資格や経験の有無もチェック
管理業務主任者資格はもちろんですが、マンション管理士や宅地建物取引士、ファイナンシャル・プランナーなど関連資格の有無や、管理経験の年数も目安になります。特に高経年マンションや大規模修繕を控えたマンションでは、工事進捗の確認ができたり、長期修繕計画への知見があるなど、豊富な実績があるかが重要です。

その4:修繕に関するアドバイス能力も評価対象
管理組合と長く付き合うことになる管理会社にとっては、修繕に関する視点も欠かせません。具体的には以下のような視点が持てるかも重要になります。
中立的立場での提案ができるか
管理会社によっては、系列の施工会社を優先的に提案してくるケースがあります。しかし、それが必ずしもベストな選択とは限りません。工事の必要性やコスト、施工会社の比較を中立的な立場で説明してくれるかを確認しましょう。
また、系列の施工会社が無い場合は、むしろ中立的な視点を持っていると考えられます。系列の有無と修繕工事のノウハウは裏腹ですが、どこを優先すべきかを考えていくことも管理組合としては重要と言えるでしょう。
修繕積立金とのバランスも提案力に差が出る
長期修繕計画と修繕積立金のバランスを見ながら、段階的な対応を提案できる管理会社は、資金面の無理が少なく信頼性が高いです。修繕と財務の両方に精通しているかがポイントになります。
管理組合としてあるべき姿としての合理的な視点から、修繕積立金の値上げや長期修繕計画の見直しなどの提案が貰えると尚良いでしょう。
その5:近隣物件の実績や口コミを参考にする
管理会社においては、近隣地域で他の物件を手掛けている場合もあります。不動産情報サイトからも、近くのマンションがどの管理会社が担当しているのかを確認することも可能です。具体的には以下の様な視点を考えてみることも有効です。
地域事情に詳しい会社は対応力が高い
同じエリアに実績がある管理会社は、業務効率化の視点から、近隣物件をいくつか並行して手掛けていく事が一般的です。
その地域の特性や行政対応にも慣れており、スムーズな管理が期待できます。また、居住者層や生活スタイルも近いことから、理解が深いことが考えられます。
管理組合同士で情報交換するのも有効
評判の良し悪しは、同じマンションを管理している組合員に聞くのが一番です。理事長同士のネットワークや自治体主催の勉強会などを通じて、生の声を集めることも非常に有効です。
物件の年数や住戸数、さらに大規模修繕工事の頻度などにもよりますが、管理費や修繕積立金が適正であるかの情報を得るヒントにもなります。
その6:最新のマンション動向に強いかを確認する
最後に紹介するのが、最新のマンション動向として、国の法制度の方向性や自治体の動き、またマンション管理業界の動向を把握しているかも重要な視点です。
最新のマンション管理に必要な情報に敏感か
最近のマンション管理では、築年数の経過に伴う設備の老朽化、エネルギー効率の向上、そして管理業務のデジタル化といったテーマが避けて通れません。こうしたトレンドを把握し、提案に取り入れている管理会社は頼もしい存在となります。
またマンション全体として、技術の進歩による社会的変化等や一般的な住宅水準の向上によって、年々性能が上がっていくのが一般的です。
高経年マンションが新築マンションほどの性能にする事には一定のハードルが伴いますが、補助金の活用等も考えながら、改修によって新築に近づけていく性能向上も可能となります。
長期的視点を持っているかがカギ
「いま良ければいい」ではなく、10年・20年先の課題を想定し、段階的な対応策を講じられるかどうかが、優れた管理会社の条件といえます。特に自治体が進める「管理計画認定制度」やマンション管理業協会による「マンション管理適正評価制度」は長期的な視点でマンション管理の質を高める有効的な手法と言えます。
管理会社が最新技術や法改正にも敏感で、継続的な情報提供を行っているかを、是非確認してみましょう。

まとめ:価格・対応力・人材力の総合評価を
管理会社の選定は、単なる「見積もり比較」ではなく、「マンションの未来を誰に託すか」を決める重要な判断です。価格だけでなく、担当者の質、会社の方針、修繕提案の妥当性、近隣での実績、そして将来の管理課題に対する対応力を含めて、総合的に判断することが必要です。
一度選んだ管理会社とは、長期的な関係が続きます。そのため、管理会社変更を変更する場合は、最初の選定段階で慎重に検討する必要があります。管理組合としての主体性を持ちつつ、信頼できるパートナーを見極める目を養うことが、継続的なマンション価値の維持・向上につながります。