その管理費で損をしていませんか?2026年最新相場から読み解く、修繕積立金不足を解消する「管理費削減」のポイント

「マンションの管理費が高い」と感じたり、「適正価格がいくらなのか分からない」と思ったことはありませんか?
実は分譲時点でのマンションの修繕積立金は、本来必要と考えられる金額と大きく乖離していると言われますが、その差はどれくらいあるのでしょうか。
また、管理費は高すぎず、または低すぎない、適正な状態になっているでしょうか。
先日、マンション管理業界の専門誌であるマンション管理新聞(2026年1月5日/第1323号)にて、「2025年下半期 管理費等初期設定調査」が発表されました。 この調査は、今まさに分譲・販売されている新築マンションの初期設定価格を追ったもので、いわば「マンションの家計簿」のスタートラインを示すものです。
今回は、2025年下半期の最新データと、国交省が示す相場を比較し、マンション管理士の視点で徹底解説します。 驚くべきことに、最新の初期設定価格もまた、将来の健全な運営を維持するには、お世辞にも「適正」とは言えない実態が浮き彫りになっています。
▼前回の管理費等初期設定調査はこちら

平均価格の管理費は高く、修繕積立金は大幅に不足している!
75㎡の住戸を購入した場合、マンション分譲時の管理費・修繕積立金の平均価格は、今回の調査結果で以下のように示されています。
- 分譲価格:8,662.5万円
- 平均管理費:1万7,475円/月
- 平均修繕積立金:9,450円/月
- 修繕基金(一時金):77万7,525円
修繕積立金は「将来の赤字」を内包している
国交省による「マンション修繕積立金に関するガイドライン」では、マンションの規模や設備によって幅はあるものの、修繕積立金の目安はおおむね290円/㎡前後とされています。
この考え方に基づくと、75㎡の住戸では、
75㎡ × 290円 = 21,750円
が、長期的に無理のない月額修繕積立金の水準となります。
一方、今回の調査における分譲時の平均的な修繕積立金は月額9,450円にとどまっています。分譲時に修繕基金を徴収しているとはいえ、月額ベースでは約12,000円の不足が生じている計算です。
この差額は一時的なものではなく、将来的には積立金の値上げや一時金徴収という形で必ず調整が必要になります。分譲時の初期設定価格は「売りやすさ」を優先した数字であり、多くのマンションは見えない赤字を抱えた状態でスタートしているのが実態です。
管理費は「相場」を大幅に上回る高水準
一方、管理費については、国交省の令和5年度マンション総合調査による全国平均の相場が158.6円/㎡とされています。
これを75㎡の住戸に当てはめると、
75㎡ × 158.6円 = 11,895円
が、一般的な管理費の目安となります。
しかし、2025年下半期の新築マンションにおける平均管理費は17,475円と、この相場を月額で約5,500円以上も上回る水準で設定されています。新築物件では最新設備や手厚い管理体制が組まれているため、「高くても仕方ない」と受け止められがちですが、この水準が長期的に妥当かどうかは冷静に検証する必要があります。
特に問題なのは、管理費が高めに設定される一方で、修繕積立金は極端に低く抑えられている点です。このアンバランスな初期設定が続くと、将来は管理費を下げられないまま、修繕積立金だけを大幅に引き上げざるを得ない状況に陥り、結果として管理組合運営の自由度を大きく奪う要因となります。
戸数別・地域別の詳細データ(2025年下半期調査)
以下は、最新の紙面データから正確に転記した数値です。 空欄は調査対象が存在しなかった項目を意味します。
表①:1㎡あたりの管理費の平均価格(単位:円)
| 2~ 20戸 | 21~ 40戸 | 41~ 60戸 | 61~ 80戸 | 81~ 100戸 | 101~ 150戸 | 151~ 200戸 | 201戸 以上 | |
| 北海道 | 204 | 187 | 154 | 218 | 125 | |||
| 東北 | 412 | 218 | 111 | 224 | ||||
| 関東 | 297 | 355 | 302 | 269 | 275 | 260 | 256 | 352 |
| 東海 | 173 | 161 | 185 | 158 | 164 | |||
| 北陸・ 甲信越 | 216 | 157 | 164 | |||||
| 関西 | 148 | 181 | 187 | 177 | 215 | 193 | 163 | 224 |
| 中国 | 156 | 168 | 177 | 146 | 188 | 136 | ||
| 四国 | 94 | 132 | 126 | 118 | ||||
| 九州 | 160 | 164 | 146 | 137 | 140 | 153 | 146 | |
| 全 国 | 275 | 251 | 209 | 210 | 212 | 221 | 208 | 319 |
【データから読み解く管理費の傾向】
戸数別の単価を見ると、基本的には規模が小さいマンションほど単価が高くなる傾向が見て取れます。 清掃費や管理員人件費、エレベーター保守費といった固定費を少ない世帯数で負担しなければならないためです。 注目すべきは関東の201戸以上の「352円」という数値で、タワーマンションを中心とした大規模物件ならではの、手厚いコンシェルジュサービスや豪華な共用施設の維持コストが、単価を押し上げていると推測されます。
表②:1㎡あたりの修繕積立金の平均価格(単位:円)
| 2~ 20戸 | 21~ 40戸 | 41~ 60戸 | 61~ 80戸 | 81~ 100戸 | 101~ 150戸 | 151~ 200戸 | 201戸 以上 | |
| 北海道 | 105 | 106 | 84 | 117 | 135 | |||
| 東北 | 120 | 82 | 63 | 93 | ||||
| 関東 | 120 | 150 | 150 | 139 | 126 | 142 | 164 | 166 |
| 東海 | 103 | 139 | 131 | 107 | 122 | |||
| 北陸・ 甲信越 | 91 | 84 | 135 | |||||
| 関西 | 100 | 106 | 114 | 112 | 119 | 105 | 96 | 121 |
| 中国 | 95 | 82 | 95 | 86 | 68 | 99 | ||
| 四国 | 81 | 74 | 62 | 90 | ||||
| 九州 | 115 | 112 | 99 | 112 | 104 | 107 | 100 | |
| 全 国 | 118 | 126 | 122 | 122 | 111 | 125 | 134 | 155 |
【修繕積立金不足が示す「将来負担」の現実】
前述のガイドライン目安(290円/㎡)に対し、どの地域・どの戸数帯でも初期設定額は大幅に不足しています。 これは分譲時に意図的に低く設定し、数年ごとに値上げを繰り返す「段階増額積立方式」が採用されているためです。 今後の建築資材高騰や人件費不足を考えれば、将来的に管理費と同等、あるいはそれ以上の金額まで値上げされる可能性が高いことは覚悟しておかなければなりません。
想定外の劣化と「物価高」への備えが必要
新築時は綺麗で問題がないように見えるマンションでも、時間の経過とともに必ず劣化は進行します。廊下やエレベーター、外壁といった目に見える部分だけでなく、給排水管やポンプ、電気設備などの普段は意識されにくい共用設備ほど、後から大きな修繕費を要するケースが多いのが実情です。
加えて近年は、建築資材価格の上昇や人手不足による人件費高騰の影響を受け、5年前に立てた長期修繕計画の予算では、現在の工事見積を賄えないケースも現実のものとなっています。これは一部の特殊なマンションに限った話ではなく、今後さらに広がる可能性があります。
こうした背景を受け、最近では国交省の見解として、新築マンションの修繕積立金について、初期設定額から30年間の値上げ幅を「1.83倍以内」に抑えることが望ましいとする考え方が示され、話題となりました。これは、分譲時に極端に低い金額を設定し、将来大幅な値上げを行う運営が、区分所有者に過度な負担を強いるリスクが高いことを示唆しています。
管理組合としては、デベロッパーが定めた初期設定を前提にし続けるのではなく、早い段階から将来の工事費や物価動向を見据え、「均等積立方式(計画期間中、定額で積み立てる方式)」への移行を含めた現実的な検討を行うことが、マンションの資産価値を守るうえでますます重要になっています。

マンションの管理費と修繕積立金の総括
22025年下半期の管理費等初期設定調査からは、分譲マンションのランニングコストに関して、無視できない共通課題が見えてきます。今回のデータを整理すると、特に次の2点は明確な結論として押さえておく必要があります。
一つ目は、新築マンションの修繕積立金が明らかに不足しているという点です。分譲時の初期設定額は、国交省のガイドラインが示す目安と比べても低水準にとどまっており、将来的な値上げはほぼ避けられません。「値上げがあるかどうか」ではなく、「いつ、どの程度の負担増になるか」が問題となります。
二つ目は、管理費が相場よりも高めの水準でスタートしているケースが多いという点です。新築時は最新設備や手厚い管理体制を理由に、高めの管理費が受け入れられやすい傾向があります。しかし、その水準が長期的に見て本当に妥当かどうかは、冷静に検証する必要があります。
このように、修繕積立金は不足し、管理費は割高というアンバランスな状態が続けば、将来の管理組合運営は次第に苦しくなります。だからこそ重要なのは、早い段階で現状を把握し、管理費の適正化や積立金の見直しといった対策を検討できるかどうかです。
この事実にいち早く気づき、管理組合として行動に移せるかどうかが、10年後、20年後のマンションの資産価値と運営の安定性を大きく左右すると言えるでしょう。

修繕積立金不足への「具体的」な対応策
もし「今の管理費が高すぎるのではないか」「将来、修繕積立金が足りなくなるのではないか」と感じた場合は、一度冷静に現在の管理会社の見直し(リプレイス)を検討してみることが有効です。管理費や積立金の問題は、個々の住戸では解決できず、管理組合としての判断が欠かせません。
管理会社間に競争の原理を取り入れることで、単なるコスト削減にとどまらず、業務内容やサービス水準を見直すきっかけにもなります。その結果、管理費の適正化(削減)と、管理の質の向上を同時に実現できるケースも少なくありません。
削減に成功した管理費は、管理組合の判断次第で、以下のように有効活用することができます。
- 修繕積立金に上乗せし、将来の値上げ幅を抑制する
- 借入金の繰り上げ返済に充て、長期的な負担を軽減する
- 余剰分を予備費に回し、突発的な不具合や想定外の支出に備える
「マンションは管理を買え」と言われる時代だからこそ、管理費をただ支払うのではなく、その中身を見直し、将来に備える視点が重要です。最新のデータを踏まえ、管理組合自らが管理費の適正化と修繕積立金の確保に取り組むことが、真の意味での資産価値の維持につながります。

