管理費を削減し修繕積立金を充実させる方法にはどのようなものがあるか?
管理組合のお金に関する課題は尽きず、日々実施される理事会はもとより、管理組合総会でも話題になる事が非常に多いテーマです。
- フロントや管理人の人件費の高騰
- 修繕箇所が経年で多くなり工事費が高騰
- 大規模修繕の職人や素材の高騰
- さらに住民の高齢化による支払い能力の低下
これらの問題はいずれどのマンションにも当てはまってくるものであり、早い段階から検討するに越したことはない重要テーマです。
これらの課題に共通するのは管理費、修繕積立金であり、今回は管理費を極力圧縮して、修繕積立金をどうやったら貯めていけるかにスポットを当ててみたいと思います。
管理費と修繕積立金
管理費と修繕積立金について、まずは触れておきます。
管理組合が、各区分所有者から徴収するお金として、管理費と修繕積立金が主に該当しします。
管理費とは
区分所有者が管理組合に支払った金額の中で、管理費とは、標準管理規約第27条によると、「通常の管理に要する経費」として、充当されるものです。
具体的には、管理員人件費、公租公課、共用設備の保守維持費及び運転費、備品費、通信費、事務費、共用部分等の火災保険料や損害保険料、清掃費、消毒費及びごみ処理費等多岐に渡ります。
これらは、普段マンション管理を行っていくにあたり、発生するような費用です。
修繕積立金とは
同じく、修繕積立金とは、標準管理規約第28条によると、「特別の管理に要する経費に充当する場合に限って取り崩すことが出来る」ものとして、充当されるものです。
具体的には、一定年数の経過ごとに計画的に行う修繕や、不測の事故その他特別の事由により必要となる修繕、敷地及び共用部分等の変更など、特別なものに使うためのものとなります。
当コラムでは頻繁にテーマとなっている大規模修繕工事や、何らかの大きな事故が起きた際の応急的措置等、特別な支出を要する場合にしか使えない、いざとなったら使用するものとなります。
管理費と修繕積立金の関係とは
管理費は「通常の管理に要する」経費、修繕積立金は「特別な管理に要する」経費に充てられると確認しましたが、それぞれは混同せず、明確に区分して経理しなければならないとして定められています。
また、年間で余剰となった管理費については、総会等を通じて修繕積立金へ積み立てる事ができます。こちらは翌年度の管理費予算に照らして、不足が無いかを確認する必要があるでしょう。
一方で、修繕積立金を管理費に充当することは、原則として出来ません。
理由は、長期的な修繕費用として、将来や不測の事態に備えて貯めている積立金を、通常の管理に関する費用に補填するということは、通常の管理に関する費用が自転車操業的に必要になってしまっている事を意味します。
これは、将来的な修繕に関する費用に支障が生じる可能性があり、そういった意味でも補填は原則出来ない事となっています。
さらに、借入金を返済に充てることが出来るのも修繕積立金のみとなります。
管理費圧縮の考え方
日々の費用として掛かってくる管理費は、日常の支出の中で適切な額を支払っているかどうか、常に確認していくことが望まれます。
支出を圧縮することが出来れば、前述の通り、年度末に計画に対して残った分については修繕積立金に振り替えることが出来ます。
徴収する管理費は維持する様に務める
前提ですが、日々の管理費が少なくなったからと言って、区分所有者から徴収する管理費を減らすことは辞めるべきです。
理由は、現時点では余剰があるとしても、来るべき時への備えとして修繕積立金として積み立てておくのが大切なこと、また再度値上げする必要が出た時に、値上げ決議に対する合意形成において困難を伴うためです。
心理的に値下げは嬉しいものの、値上げは難しいというのは感覚的に分かるかと思います。
管理費の支出について無駄がないか見る
管理費の中で、本当にこの支出が必要なのか、また金額的に妥当なのかを考えていく必要があります。
管理会社に支払う費用として適切なのか、保険料の見直しはできないのか、無駄な備品出費や、毎月定期的に支払いをしているものの、実際余り使用していなかったものはないかなど、支出費用一つ一つをあらゆる観点から見ていくことが重要です。
管理会社は自らの費用に影響してくることでもあるので、細かく見てもらえないこともあることから、管理組合や理事会で見ていくことが重要です。
日々の修繕についてはまとめて実施や大規模修繕に合わせる等工夫する
急ぎ修繕しなければならない点を除いて、まとめて修繕できないかどうかは考えていく必要があります。
大規模修繕工事まで維持することができるか、または近くまとめてやる工事を設定することでそこまで維持できないか等も検討すべきでしょう。
また、修繕をする場合は、必ず相見積もりを取って品質面と金額面、会社の実績等の観点から見ていく必要があります。
管理会社お抱えの会社にお願いすることで、高額にならないよう気を付ける必要があります。
具体的な管理費の圧縮方法
次に、具体的な管理費の圧縮方法を考えていきますが、管理費は見方によっては様々な観点から圧縮の可能性があります。
しかしながら、実施可能か、また逆に管理組合の負担になって戻ってこないかもあるので、知恵を絞っていかなければならない所もあります。
単純な管理費圧縮以外にも、自ら実施する方法や、これまでのやり方から手法を変えるなど、様々な考え方がありますので、いくつか切り口を考えてみます。
管理会社に支払う費用が適切であるか確認する
管理会社に支払っている費用として、その稼働に応じて適切かどうかは細かく見ていくのがいいかと思います。
なぜなら、管理費に占める割合が一番多いのが、フロントマンや管理会社への業務の外注、そして管理員等に掛かる経費であるからです。
適切かどうかは、例えば管理組合の経理に掛かる費用を管理会社に外注する場合は、果たして経理にどれぐらいの時間を要しているのか、また管理員の時給と稼働時間を勘案して適切かどうかなど、細かな所を出してもらうのが重要です。
さらに、管理費の平米当たりの適正額が各都道府県別に出ていますので、そこの平均額よりも上回っている場合は、客観性が示せるので見ておくと良いでしょう。
順位 | 管理会社 | 管理戸数 |
---|---|---|
地域別 | 北海道 | 397 |
東北 | 169 | |
関東 | 205 | |
北陸・中部 | 152 | |
近畿 | 159 | |
中国・四国 | 119 | |
九州・沖縄 | 163 | |
都市圏別 | 東京圏 | 214 |
名古屋圏 | 151 | |
京阪神圏 | 162 |
※国土交通省 平成30年度マンション総合調査管理費収入/月/㎡当たり(使用料・専用使用料からの充当額を除く)より抜粋
管理費圧縮に向けて管理組合としては「ここまで見るのか?」というぐらいに見ることが管理費圧縮への第一歩です。
管理組合でできることはないか考えてみる
管理組合で巻き取れる管理業務はないかを考えてみることも一つです。
ゴミ出しルールの徹底や共有部分に所有物を置かない等、住民の日々の意識一つ変えるだけで、また協力体制で様々なコスト削減のきっかけとなる可能性もあります。
例えば、週に一度は管理組合内で協力しながら自らゴミ拾いや清掃を行うことで、清掃の回数を下げることや、定期的な見回りにより劣化箇所等点検する、など組合の意識次第でコスト削減できることも検討できるかもしれません。
IT化できるものはないか考えてみる
長期間のコロナ禍により生活様式も変わってしまいました。集まって実施することからWEB会議への変更も区分所有者や理事会も慣れてきている所もあります。
これにより、貸会議室の利用や、わざわざ印刷していた紙の資料がいらなくなったり、それに対するフロントマンの稼働も節減される効果もあります。
加えて、経理についても管理会社への一括丸投げから、ITツールやアプリを使って管理することができる環境が整ってきています。
特に自主管理をしている所は比較的速やかに導入しやすいかと思いますが、管理会社管理の管理組合も将来的にはIT化の流れは益々出て来ると考えられます。
まとめ
管理組合や理事会の意向、合意形成次第では、様々な管理費圧縮の手段が考えられます。
将来的には、全てのマンションにおいて「高経年化」「住民の高齢化」の2つの老いは避けられない事実であり、そうなった場合には金銭的な課題が様々な場面で発生するでしょう。
その時に備えて今からしっかりと準備をしてください。