設備メンテナンス契約の変更と管理費削減の関係
先日、弊社にお問い合わせいただいたお客様より
”設備系のメンテナンス契約を、管理会社への委託契約から管理組合とメーカーとの直接契約に切り替えたら管理費は削減できますか?”
との質問をいただきました。
しかし、実は管理費の削減ポイントは、『直接契約か委託契約か』ではなく、『メンテナンス会社はメーカー系か独立系か』になります。
メーカー系、独立系とは何か?なぜ、直接契約にしても、管理費が削減できないのか?そして、最後に直接契約への変更方法についてご紹介させていただきます。
保守を担当する会社には種類がある
業務委託契約でも、管理組合との直接契約でも、実際に保守を行う業者には、大きく分けて二種類の会社があります。ひとつはエレベーター(や駐車場。以下エレベータで統一します)を作っている会社の一部門や子会社です。「メーカー系」(の会社への委託)と呼ばれています。
もうひとつは「独立系」です。メーカーと直接の縁のない会社(に委託すること)を指しています。それぞれのメリット・デメリットを紹介します。
「メーカー系」のメリット・デメリット
「メーカー系」を選んだ際のメリットをいくつかご紹介します。第一に「メーカー系」は、当然ながらそのエレベーターについて、どこよりも詳しいです。どういう部品からどう作られているか、特徴は何か等について、熟知しています。また、保守点検やメンテナンスを行う作業員を訓練するための充実した施設を持っており、十分な研修を行うことが出来ます。従って、各マンションのエレベータに直接触れる作業員も、研鑽を積んでいて詳しいであろうことが見込まれます。
また、「メーカー系」では「この部品は何年間周期で交換する」と決めており、部品が傷んでいなかったとしても定期的な交換を実施します。こういった保守を「フルメンテナンス(FM)契約」と呼びます。
月1回の定期点検、年1回の法定点検などの実施が確実に行われると考えて問題ありません。
デメリットとしては、一般的にコストが高めだということがあげられるでしょう。
「独立系」のメリット・デメリット
「独立系」のメリットはコストの低さです。コストだけを考えるなら、こちらを選ぶのが正解でしょう。
デメリットは、担当者の依存度が大きいことです。社員教育はどうしても行き届かない部分があるといえます。ただ、「メーカー系」から優秀な人を引き抜いたりしますので、腕が劣るとも一概には言えないのです。
もう一つ、「メーカー系」と大きく異なるのは、部品の交換のタイミングです。「独立系」は、使えるものは使い続けようというスタンスでメンテナンスを行います。交換の周期はメーカー系よりも長くなります(P.O.G契約)。
年に一度の点検は法律で定められているため実施されますが、自主的な点検をどのような頻度で行ってもらうのか、そのあたりは確認の上で、明文化の上で契約することをおすすめします。
契約形態と管理費削減は直結しない
業務委託契約を直接の契約に変更したからといって、必ず管理費を削減できるわけではありません。なぜなら大手管理会社は数の規模によるスケールメリットがあるため、エレベーター会社も管理会社を通したいという意向があるためです。
エレベーター会社からすると、今の管理会社とは次の物件でも、その次の物件でも付き合いを続けたいのです。そのため、「直接契約ならコストは下がりますよ」とはならない可能性が高いのです。
もしも、管理費を削減するのであれば、メーカー系から独立系に切り替える、もしくは相見積もりを取って管理委託費を比較する、という方法が有効です。
なお、当社の事例として、管理会社の変更を機に、今まで直接契約であった設備系のメンテナンス契約を委託契約に切り替えて管理費を削減できたという事例もあります。
これは前述の通り、大手管理会社のスケールメリットによるものです。
契約形態を変えるのに特別な措置は要らない
最後に相見積もりをとって安いところを選択したい、という管理組合様向けに、契約形態の変更方法についてご紹介します。
契約形態の変更には面倒があるのかなと思う管理組合があるかもしれません。ですが、どの会社に幾らで任せるまで決めることがすべてです。あとは総会での承認が得られれば、「こう決まりました」と関係する会社に報告するのみです。支払いの方法なども変更する必要はありません。支払いは、これまで通り管理会社が行うからです。
ただし、今まで管理会社が行っていた業務範囲が、変わることになるので、どの程度理事会に作業が発生するのかは契約形態変更前によく確認しておくことをお勧めします。
委託契約と管理費の削減のまとめ
ご質問いただいた方に限らず、駐車場やテナントからの収益を見込んでいたが、全く借り手がつかずに修繕積立金が貯まらない、管理費を削減して修繕積立金に回したい、そんなマンションは多いのではないでしょうか。
特に、車を持たない世帯が増えている昨今、駐車場から利益を得ようと計画していた管理組合様の多くは、大抵悩んでいます。今回は、エレベーターや機械式駐車場の設備管理会社と契約形態について紹介させていただきました。この記事がマンション運営の改善の一助になれば幸いです。