管理費と修繕積立金の平均価格!知っておきたい分譲マンションの現実

管理費と修繕積立金の相場と平均

「マンションの管理費が高い」と感じたり、「適正価格っていくらなんだろう?」

そう思ったことはありませんか?

実は分譲時点でのマンションの修繕積立金は、本来必要と考えられる金額と大きく乖離していると言われますが、その差はどれくらいあるのでしょうか?

また、管理費は高すぎず、または低すぎない、適正な状態になっているでしょうか?

マンション管理新聞にて「管理費等初期設定調査」が記載されていました。この調査では「分譲時点のマンションの管理費と修繕積立金の初期設定価格」について紹介されています。

そこで、マンションの管理費・修繕積立金について、

  • 2024年上半期に分譲・販売された民間マンションの管理費と修繕積立金の価格(以下:平均価格)
  • 国交相により行われている令和5年度マンション総合調査でまとめられている管理費と修繕積立金の相場(以下:相場価格)

として、平均価格、相場価格について当社の視点でまとめてみました。

驚くべきことですが、分譲時の初期設定価格は全く適正な価格に設定されていません!

目次
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平均価格の管理費は高く、修繕積立金は大幅に不足している!

75㎡の住戸を購入した場合、マンション分譲時の管理費・修繕積立金の平均価格は、調査結果で以下のように紹介されています。

  • 平均管理費:15,525円/月
  • 平均修繕積立金:8,250円/月

修繕積立金は大幅に不足

当サイトのマンションコラム・豆知識の修繕積立金の相場と適正額の調べ方にて「マンション修繕積立金に関するガイドライン」に記載されている適正額の計算方法を紹介しています。その計算方法に従えば、タワーマンションや戸数等の規模の大小や、機械式駐車場の有無でも変わってくるものの、修繕積立金に適正額はざっくり見積もると『290円/㎡』となります。

つまり、70㎡の住戸であれば、70㎡ × 290円 = 20,300円 が月額修繕積立金の適正額です。

分譲時には修繕基金を集めているとはいえ、適正額に対して修繕積立金の平均価格は月当たり約12,000円不足していることになります。

管理費は平均値に近い値に設定

一方管理費については、戸数別・地域別で見るマンション管理費で相場をまとめています。令和5年の国交省の調査に従えば、管理費の全国平均の相場(使用料・専用使用料からの充当額を除く)は『158.6円/㎡』です。

70㎡ × 158.6円 = 11,102円 が管理費の相場となるため、平均価格の管理費は相場価格の管理費を約4,400円上回っている状況です。

ここまでは全国単位の調査結果です。

この調査ではさらに戸数別・地域別に管理費・修繕積立金の平均相場がまとめられています。

戸数別・地域別の管理費と修繕積立金の平均と相場

1㎡あたりの管理費の平均価格(単位:円)

戸数別の管理費

2〜
20戸
21〜
40戸
41〜
60戸
61〜
80戸
81〜
100戸
101〜
150戸
151〜
200戸
201戸
以上
北海道208186159194212192
東北197110220
関東336305282247242242226274
東海211186189183166168
北陸・甲信越236188281193207
関西353261167170148149157185
中国152132159141153
四国156140140145
九州257150137126126142143137
全国318241181197184195185226

戸数別の管理費の平均価格に注目してみると、規模が小さいマンションほど管理費が高くなっています。

これは例えばエレベーターや清掃、管理員さんなどへの通常の管理に関する費用は、マンション規模が小さい場合であれば、少数で割らなければならないため、各住戸の負担割が高くなり、結果として管理費が高くなります。

最も高いのは関西地方の2〜20戸規模のマンションの353円/㎡で、もっとも安いのは東北地方の81〜100戸のマンションの118円/㎡です。

地域別で管理費の平均価格をみると、「中国・四国・九州」以外の管理費は、全体的に割高である印象を受けます。特に関東地域は突出して高くなっています。

関東はタワーマンションや大規模マンション特有の特殊な設備、機械式駐車場などにより管理費が他の地域と比べ高くなっているものと推測されます。

なお、

国土交通省の調査による相場価格:158.6円/㎡

となっており、1㎡あたりの単価を比較すると、全てにおいて「相場価格」を上回っています。

すなわち、新築分譲マンションの管理費の価格は、相場価格を上回る傾向が見られ、当初から高い価格で設定されていることになっています。

1㎡あたりの修繕積立金の平均価格(単位:円)

戸数別の修繕積立金

2~
20戸
21~
40戸
41~
60戸
61~
80戸
81~
100戸
101~
150戸
150~
200戸
201戸
以上
北海道7911989124110150
東北10862102
関東114136130134130118113123
東海12511710712712290
北陸・甲信越7880898780
関西1391171041051019790102
中国8577697343
四国85686060
九州14010392878592106112
全国125120100111112106108113

前述の通り「マンション修繕積立金に関するガイドライン」では、ざっくりとした値ですが『290円/㎡』が修繕積立金の適正価格の目安です。

この調査結果では、どの戸数帯の住戸でも修繕積立金は適正額に全く届いていません。

分譲時の平均価格のため、「段階増額積立方式(初期設定が低くその後5年10年といった単位で修繕積立金が値上がりする方式)」が採用されているのでしょう。

この結果から言えることは

修繕積立金は確実に足りていないので、今後必ず修繕積立金は値上げされる

ということです。

修繕積立金ガイドラインの適正額とこの調査結果を比較するのであれば、今後、どのマンションにおいても修繕積立金は2倍から3倍以上に確実に値上げされるということです。

修繕積立金は想定外の劣化への対応にも必要

当初は新築で綺麗なマンションであっても、時間の経過とともに、廊下やエレベータ、壁面などの目に見える部分だけではなく、配管や機械設備などの見えない部分も、必ず劣化する箇所が現れてきます。

また、長期修繕計画を立てていたとしても、想定外の劣化により、修繕が必要になる場合も考えられます。

そのための将来的な修繕に備えて、管理組合としては早い段階から修繕積立金について適正に積み立てておきたいと考えるのが普通でしょう。

管理組合の意図とは違い、予め低く設定されている修繕積立金について、区分所有者の理解を得ながら、将来の負担に備えるために早い段階から適正額を積み立てていくことが大切です。

国交省は段階的に修繕積立金を増額させていく「段階増額積立方式」よりも、計画期間中均等に積み立てる「均等積立方式」が望ましいと指摘しています。

均等積立まで調整期間が発生するかもしれませんが、適切な長期修繕計画を立てて修繕積立金を積み立てていくことが望まれます

マンションの管理費と修繕積立金の相場の平均の総括

この調査状況から以下2点のことが言えます。

1)新築マンションにおける修繕積立金は大幅に不足しており、今後確実に値上げがされる
2)管理費は大幅に割高な設定となっている

平均価格と相場価格の管理費比較、平均価格と適正額の修繕積立金の比較から、多くマンションでは管理費は大幅に割高であり、修繕積立金が大幅に不足しているという問題があります。

この将来に及ぶ重要な問題に管理組合がいかに早く気づいて、管理費を下げて将来修繕積立金の不足が無いように対応策を練っていくことが重要であると言えるでしょう。

修繕積立金不足の対応策

表で「平均価格」として紹介した管理費と修繕積立金は、新築マンションにフォーカスを当てた数値であり、「相場価格」は、国交省が新築、中古マンションを含めた全体を調査した数値となっています。

そのため、双方に差はあると考えられますが、目線は全マンションを対象とした国交省の「相場価格」に置くべきです。

そのため、個々のマンションにおいて管理費が適正になっておらず高くなっていたり、また修繕積立金が不足していることが当面解消されない場合は、一度冷静に現在の管理会社の見直しを検討してみることをおすすめします。

管理会社の見直しにより、マンション管理に競争の原理がうまれ、管理費の軽減等の適正化だけでなく、管理の質も向上させることができるからです。

「マンションは管理を買え」と言われる時代です。

マンションの管理とは清掃などの目に見えるものだけではありません。修繕積立金がしっかり蓄えられていること、管理費が適正価格である事も大切なマンションの管理です。

もし削減することが成功した場合の管理費は、

  • 修繕積立金に上乗せして、修繕積立金の値上げ幅を抑制する
  • 修繕積立金に振り替えたあと、借入の繰り上げ返済に充てる

などの利用用途があります。

他にも管理費の余剰分を予備費に回すなどの選択はあると思いますが、この選択は管理組合次第で管理会社に流れがちな管理費以外に、有効活用することができます。

多くの管理組合はすでに管理費の適正化と修繕積立金の確保のための実行に移されています。

ぜひ実行に移し、管理費の適正化や、将来に先送りしている修繕積立金不足の改善に取り組んでください。

記事監修

マンション管理士:古市 守(ふるいち まもる)

管理会社変更をはじめとするマンション管理組合のコンサルティング、管理計画認定制度支援や事前審査担当、自治体のマンション調査、マンション管理コラムの執筆・監修などで活動。

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