マンションの理事になったら?理事会がすべき7つの仕事+α
管理組合運営において、多くのマンションは輪番制(1~2年おきに周期的に、順番に回ってくる理事の順番制度)を導入しています。
ただ、多くの場合、輪番でまわってきた新しい理事は、そもそも「理事」や「役員」といった言葉すら理解していないことも多く、場合によっては管理組合の構成すらもよくわかっていないケースがあります。
ご自身が所有するマンションで理事になった場合、理事会がやるべき7つの仕事をご紹介します。
1.理事会へ出席する
当たり前ですが、理事会へ出席することが最も重要です。理由は簡単で、理事会が成立しないからです。
例えば管理組合役員が7名いるAというマンションで、そのうち監事が1人選任されており、理事が6名だったとします。管理規約で明確に定めている場合がほとんどですが、理事会の成立要件は「理事の半数以上の出席をもって」成立すると定められています。
これは委任状で半数以上集まっていても足りず、出席が半数以上いることが前提となります。つまり、Aマンションでは、3名以上が理事会へ来なければ流会となり、理事会は不成立となります。
ただし、極論ですが、総会は理事長1人だけ出席でも委任状や議決権行使書が半数以上集まっていれば成立します。ある意味矛盾にも感じますが、理事会がマンションのためにうまく運用するためには理事の出席は必須となります。
2.事業計画(年間計画)と予算を把握する
理事会は成立することが大前提ですが、ただ単に集まって黙っていればいいというわけではありません。自分たちが今期何をすればいいか、何をしなければならないか、どれだけの予算(お金)を執行するのかを把握しなければなりません。
管理会社と委託契約を締結しているマンションの多くの場合、その事業計画案や予算案は管理会社で作成し、前期の理事会で承認、その後総会にて承認されています。総会で承認されている以上、マンションはその計画に則って運営することとなります。
「4月に設備の点検を行い、5月に消防設備点検、6月に・・・」という計画を理事会が主導し、遂行し、また、不具合や問題があった場合は、その修繕、対応を審議するといったことを年間の理事会で繰り返して審議します。
ただし、予算があるため、原則はその範疇で予算執行することが求められます。そのため、今季の事業計画と予算を把握することは理事にとって重要なものとなります。
3.管理費、修繕積立金について考える
大雑把な表現ですが、理事会では、年間に何百万、大規模マンションでは何千万というお金を予算として執行していきます。言うまでもなく、そのお金は管理会社が提供したお金ではなく、1件1件の管理費、修繕積立金の徴収によって貯まったお金です。
マンションの場合は、それが定額徴収されているため、そのお金が「何に使われているか」よりも「自分は払っているからうまくやってくれているだろう」という考えになりがちです。
マンション内の何かを修繕する時や何か備品を購入する時も一旦自分の手元から出て行ったお金なのであまり考えることはないかもしれませんが、家のお金で自分の財布からお金を出す感覚で考えなければ、他人の庭で起きている話にしか考えられません。理事である以上、自身が出費する感覚は重要です。
4.マンションの「今」を知る
これも大雑把な表現ですが、マンションの「今」を知ることがとても重要となります。
例えば築10年のマンションで長期修繕計画表に大規模修繕工事の時期とあれば、マンションの維持修繕における最も大きな期となります。10年から15年に1度のマンションの大イベントを検討、決定する時期となるため、理事会の役割は他の時期と比べ大きなものになります。
その他にも、マンションの防災対策やペットの飼育について、居住者マナーなどそのマンションが今解決しなければならない課題や問題点を知り、解決するために自身の意見を持つことが重要です。
5.マンションの「これまで」を知る
新築マンションの1年目で理事になった場合を除き、輪番表で理事になった場合はこれまでも何年と理事会役員が入れ替わり審議を重ねています。
そういったマンションで最も知らなければならないことは、過去の理事会決議や総会決議を知っておくことが大切です。
あるタイミングでは案件に対してこう処理した、一方であるタイミングでは別な処理をした・・となればマンションの管理組合運営に一貫性がなくなり、場合によってはそれによって不利益を被った管理組合員からもう非難を浴びることもあります。
特にお金が絡むと今後の人間関係にも及ぶことがあるため、マンションの「これまで」を知ることはとても重要です。
6.実務を知る
これは具体的な話になりますが、マンションでは日々何かしらの出来事があります。
場合によってはマンション居住者のルール違反であったり、建物設備の不具合であったりと多岐にわたります。それらの対策の初手を打つのは理事会です。時には規約に書かれていない問題点や突発的な事故に伴う設備修繕を審議することもあります。
多くの場合は過去の経緯や管理会社からのアドバイスに則って進めることとなりますが、あくまでも主体は現在の理事にあり、予算執行することを認められている役員であるということを自覚して対処することも重要です。
7.いち居住者として少しでもマンションを良くする
輪番制である以上、強制的に選任されますが、どうせ理事をするのであれば、自分が理事になったことによりマンションを少しでも良くすることを考えるべきです。
理事会はマンション内の物事の発信者という立場でもあるため、啓発やルールきめの一端を担い、必要に応じて共用部分の変更等も案を詰める立場にあります。
このマンションはこうであればいいのに、こうすればいいのにを最も実現しやすくなる時期でもあるため、積極的に意見を展開するとともにいち居住者としてマンションを良くすることに努めていくべきです。
以上の7項目を把握したうえで、理解すると輪番制で理事となった時には、十分に対応できます。ただ、これらに加え、管理会社と管理委託契約を締結しているマンションで、もう1点重要なポイントがあります。それを+αとして書いておきます。
+α.管理会社を利用する
多くのマンションは管理会社と委託契約を締結し、管理組合運営の多くを管理会社へ任せています。そのため、管理会社の手腕はとても重要なものとなります。
輪番制で理事になると管理会社の担当者や管理員、コンシェルジュや清掃員とも実務上距離が近くなります。
とりわけ管理会社のフロント担当は、理事会の度に顔を合わせることとなり、アドバイスや提案を求めることとなります。
ただ、ここで注意が必要なところとして、あくまでも管理会社の担当者はお金を払って業務にあたってもらっており、その対価分以上に働いてもらう必要があります。
日常的な困ったことの対応や、突発的な事故対策、各設備の不具合等の改善提案を積極的に取り組んでもらえるよう求めることはもちろんですが、現在、マンション管理会社は星の数ほどと言われるぐらい多数あり、管理組合が管理会社を選ぶことができる時代でもあります。
理事は、金額面、サービス品質やマンション内の問題を理事以外の組合員よりも身近に見ることができ、また、厳しく見るべき立場でもあります。
いい意味でも悪い意味でも管理会社を利用することを常に考えておく必要があります。