マンション管理組合で出来る防災対策と必要な防災グッズ

管理組合の防災対策

以前はマンションを購入する方々にとっては、町内会や近所付き合いがわずらわしいということが一般的でした。

しかし、東日本大震災以降、自分の家族を守るために、自分の所属するコミュニティの中で、協力し合う必要性を痛感し、助け合いたいという考えにシフトしていることを感じます。

マンション住まいの中で切っても切れないコミュニティが管理組合という組織であることに気が付かれます。そのコミュニティであるマンションの中でできる防災対策はなんでしょうか?

防災対策には、ハード面とソフト面があります。ソフト面が機能しないと、ハード面を生かすことはできません。

ソフト面とは、居住者の方々で何をすべきで、お互いどんな助け合いができるのかということです。お互いに隣に誰が住んでいて、どのような年齢構成であるかを知らなければ、大きな災害が発生したときに、何もできないはずです。

ハード面とは実際の備品などの備えになります。

ここではソフト面、ハード面を踏まえて、マンション管理組合で出来る防災対策についてご紹介していきます。

目次
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マンションの防災対策 – ソフト面

管理組合として、居住者の名簿の整備が最初に必要なことだと考えます。一般的にマンション入居時に居住者名簿や緊急連絡先票を管理組合に提出しているかと思いますが、更新されていない管理組合も多いのではないでしょうか?

10年も経つと、情報が古くなっているためまずはこれを整備しましょう。誰がどこに住んでいるのかを把握しなければ、安全確認はできません。

その上で、アンケート形式で、災害時に安否確認を希望する住戸を確認し、それに基づき安否確認連絡網を作成するのです。もう一歩踏み込めるなら、居住者の方々の中で、役割分担を決めておくこともお勧めします。

こうすることで、マンションに何かあった際に、速やかに状況を把握することができます。

天災は、阪神淡路大震災ではないですが、深夜や早朝、祝日に発生することも想定されます。広域で起これば、管理会社や警備会社自体も被災しており、また公共性の高い施設から対応しますから、駆けつけるのに2~3日掛かることも想定されるのです。その時、助け合えるのは隣近所の住民以外に居るでしょうか?

マンションの防災対策 – ハード面

ハード面で何ができるでしょうか。必要と思われる道具を管理組合で揃えておくことです。部屋に閉じ込められ人を救助するため専有部分のドアやカギを破壊するための工具を購入する管理組合は多く、その他、けが人を運搬するための担架も揃えている管理組合は多いです。

食料や飲料水は、マンション内に保管する場所がなかったり、特に飲料水は賞味期限が短いため、管理組合で用意することとなると、頻繁に買い替えしなければならず、支出も増えてしまいます。

このため、居住者に対して、日ごろから各々用意をしてもらうよう、啓蒙活動を繰り返し実施する必要があります。行政は以前は、3日分の食料と飲料水の準備をするよう、働きかけをしていましたが、東日本大震災以降は1週間分の準備を働きかけているところが多いはずです。

費用とスペースに余裕があれば、災害時用の簡易トイレの購入も、必要だと考えます。

以上を、管理組合や個々の住戸に揃えてもらう啓蒙活動ができれば、救助が来るまで、持ちこたえることができるはずです。

ここではどのような防犯グッズを備えておけばよいかご紹介します。

具体的に必要な防災グッズ

1)住戸内からの救助:地震等により専有住戸の扉が歪んでしまったり、室内にお子さんや高齢者の方が取り残されている場合、扉をこじ開けたり、破壊する必要が生じます。

【必要なもの】大きなバール、万能おの、バーロックを切断できる金ノコ、番線カッターなど

2)上層階からの救助:部屋から救助できたら、1階のエントランス等に非難させなければなりません。

【必要なもの】担架(折り畳みができるものが屋外階段での取り回しがし易く、使い勝手がよいでしょう)、背負い搬送具(ひとりでひとりをおぶるものです)、ヘルメット

3)応急手当:避難誘導できたら、怪我人に対し、応急手当をします。

【必要なもの】包帯、ガーゼ、絆創膏、消毒薬、キズ薬

4)インフラが途絶えた状態で一昼夜過ごすために必要なもの

【必要なもの】ラジオ(停電した場合情報入手に絶対に必要です)、懐中電灯、小型発電機、簡易トイレ(1回ごとに汚物を固めるタイプがよいでしょう)

また、防災グッズは、誰でもいつでも取り出しやすい場所に保管することが重要です。

食料や水は、マンションに保管スペースがない場合が多いこと、賞味期限があるため、入れ替えのたびに相当の費用が発生することにより、管理組合で備えるのではなく、個人で備えることが現実的だと思います。

以前行政は、救助が来るまでの3日間分の水と食料を個人で備えるように指導していましたが、3.11以降は、これを1週間分と言い直しています。

マンションは、電気が止まれば、エレベーターも止まります。また給水ポンプも止まるので水の供給もできなくなります。しかし、敷地内の植栽用やゴミ置場の流しの水栓は、別系統になっており、戸建住宅のように自然水圧で水が出るので(水道本管が無事な場合ですが)、そういった情報の共有も必要です。

ソフト面が機能してハード面が生きる

ハードを揃える時、必ず議論となるのが、『誰がこれらハードを使って救助等をおこなうのか』ということです。話は最初に戻りますが、ソフト面が機能しないと、ハードは宝の持ち腐れになってしまうのです。

そのためにソフト面を整備し、さらに理事会のメンバー交代の時には、災害対応についてのルールをきちんと引継ぎ、防災備品の保管場所も把握することや防災訓練を真剣に取り組むことが必要です。自分の身は、自分で守らなければなりませんが、自分の所属するコミュニティも自分達で守らなければならないのです。

阪神大震災、東日本大震災と大きな災害が発生ている中、居住者の防災意識も高まっています。防災について管理会社に相談してみるのもいいでしょう。

記事監修

マンション管理士:古市 守(ふるいち まもる)

管理会社変更をはじめとするマンション管理組合のコンサルティング、管理計画認定制度支援や事前審査担当、自治体のマンション調査、マンション管理コラムの執筆・監修などで活動。

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