マンションの管理状況が評価される!国の管理計画認定制度について解説
国の方針として、国土交通省より、「マンションの管理適正化の推進を図るための基本的な方針」が掲げられました。
今後区分所有マンションにおいては、この方針に従って、適切にマンション管理を行っていく必要が出てきそうです。
今回のマンション管理計画認定制度はどのような制度なのでしょうか?
マンション管理計画認定制度について
令和4年4月より、改正マンション管理適正化法の施行が予定されております。
その中でマンション管理適正化の観点から、適正に管理されているマンションに対して、国や地方公共団体による一定の評価を与えていく施策が検討されています。
マンション管理計画認定制度の背景
マンションは都市部を中心に重要な居住形態となっている一方、その維持管理には多くの課題があることを踏まえ、管理組合がマンションを適正に管理するとともに、行政がマンションの管理状況等を踏まえて、管理適正化の推進のための施策を講じることが必要との認識があるからです。
そのため、適切なマンション管理がなされているマンションに対しては、地方公共団体の長による認定を受けることができ、一定の評価を受けたマンションとしての評価がなされます。
とりわけ国土交通省は、高経年マンションをはじめとした管理不全マンションに対して危機感を持っており、改正法施行にこぎつけたと考えられます。
マンション管理計画認定制度とは
マンションの管理組合は、自らのマンションにおける管理計画を地方公共団体に提出し、一定の基準を満たす場合、地方公共団体の長による認定を受けることが可能となる制度です。
認定には、マンションが所在する地方公共団体がマンション管理適正化推進計画を作成していることが必要です。
改正法の施行は令和4年4月ですが、それに合わせて全国の地方公共団体が一斉に認定評価を開始するようではなく、準備出来たところから順次開始になることも想定されそうです。
手続きの方法
管理組合は管理計画認定手続支援システム(インターネット上の電子システム)を利用することが予定されています。
管理計画認定制度の申請手続き等をオンライン上で行うことで、地方公共団体に対してスムーズに申請することが可能です。
またマンション管理士による事前確認を受け認定基準を満たす場合には、マンション管理センターによる適合証が発行され、それにより地方公共団体による審査の事務手続きが省略されます。
さらに、事前確認を行う場合は、マンション管理業協会による「マンション管理適正評価制度」及び日本マンション管理士会連合会による「マンション管理適正化診断サービス」についても併せて申請を行うことを可能とする予定であり、マンション管理に関するワンストップサービスを実現する予定です。
マンション管理計画認定制度とマンション管理適正評価制度の違い
今回コラムの中心となっているマンション管理計画認定制度は国が主体で進めている管理評価制度であるのに対し、管理適正評価制度はマンション管理業の団体である、マンション管理業協会が主体となって進めている制度です。
マンション管理適正評価制度とは
マンション管理適正評価制度は個々のマンションの管理状態や管理組合の運営状態を、評価者である管理業務主任者・マンション管理士という専門家がチェックし、S・A・B・C・Dの5段階で評価する仕組みです。
5つのカテゴリーから約30項目のソフト面(管理組合の状況など)や、ハード面(建物・設備の管理)の両面から数値化し、その合計点(100点満点)によりマンションの管理状態をS~Dと評価無しにランク付けして評価します。
マンションの基礎的な情報や評価情報を登録し、インターネットを通じて一定の情報を分かりやすく公開するので、いつでも誰でも閲覧することができる仕組みとなっています。
それぞれの目的の違い
国の方針に則って双方とも「良好なマンションストックの形成」である共通の目的はあるものの、それぞれの制度の違いから、各々の狙いは考えられます。
制度 | 管理計画認定制度(国) | 管理適正評価制度(管理業協会) |
共通の目的 | 良好なマンションストックの形成 | 良好なマンションストックの形成 |
それぞれの目的や狙い | 「国による基本方針の策定」に基づき「地方公共団体による計画の策定」や「指導・助言等の制度を創設」していく | 「管理の適切性が市場で評価される仕組み」を通じて「適正な管理の基準」や「情報開示」の実施 |
管理計画認定制度は、国による方針に基づき、地方公共団体が管理適正化の推進のための計画を策定していきます。
計画を定めた地方公共団体は、一定の基準を満たすマンションの管理計画を認定することができることとなります。地方公共団体の方針により、評価される制度になり、地方公共団体の動き次第で開始時期や、評価時期も変わってくることが想定されています。
一方の管理適正評価制度は、管理業協会が主体的に行う独自施策です。管理に関わる情報を分かりやすく表示しつつ、管理状態の優劣を数値化、さらにマンションの管理状況を評価し、一定の情報を市場に公開することで、マンションの管理の状態がより分かりやすく開示されることが期待されています 。
評価項目等の比較
評価項目としては、現時点ではそれぞれの制度で以下のようなものが検討されております。
制度 | 管理計画認定制度(国) | 管理適正評価制度(管理業協会) |
評価項目 | 全17項目 <修繕その他の管理の方法> ・長期修繕計画の作成日または見直し日が7年以内。 ・長期修繕計画の計画期間が30年以上、かつ残存期間内に2回以上の大規模修繕工事を含むもの等 <修繕その他の管理に係る資金計画> ・長期修繕計画に基づく修繕積立金の額の設定 ・長期修繕計画上、将来の一時的な修繕積立金の徴収予定がないこと等 <管理組合の運営状況> ・管理者等や監事の専任 ・集会(総会)の年1回以上の開催 ・組合員及び居住者名簿の具備等 | 全25項目+α(国の基準項目の追加) <管理組合体制 配点20点> 総会の開催、議事録の作成、規約の整備状況等 <組合会計収支 40点> 管理費・修繕積立金会計の収支や、滞納管理費等への対策等 <建築・設備 20点> 法定点検の実施や長期修繕計画書の有無等 <耐震診断 10点> 耐震診断の実施の有無や改修計画の予定の有無等 <生活関連 10点> 設備等異常時の緊急対応や消防訓練の実施等 |
有効期間 | 5年間 | 1年間(毎年更新) |
評価の公開方法 | ・マンション管理センターのHP ・地方公共団体のHPにも記載される可能性 | ・マンション管理適正評価制度の専用サイト ・不動産流通のポータルサイト等へのリンク表示についても検討中 |
マンション管理計画認定制度における手続きの方法の項目に記載しましたが、管理や会計、修繕等の調査項目は相互に重なっているものもあることから、管理組合の手間を省くため、双方併せて申請することも検討されています。
まとめ
令和4年4月から開始されるマンション管理計画認定制度は、マンション管理適正化法改正により国と地方公共団体が取り組むマンション管理に関する重要施策となってくると考えられます。
施行後に管理計画認定制度ならびに管理適正評価制度双方について、またコラムでも触れていきます。
どのマンションも対象になるため、今後の管理組合内における対応課題も明確になってくると考えられます。本日は制度概要が中心となりましたが、今後この辺りは記載していきたいと考えています。