高い管理費と不足する修繕積立金!マンションが抱える資金問題とその対策

マンション管理費の問題

マンションの管理費・修繕積立金に関して、頭を悩ましている方は多いのではないでしょうか。

・修繕積立金が足りず値上げが必要だ!
・駐車場の空車率が高く管理費が足りない!
・修繕積立金の値上げの前に管理費は何とかならないか?

このような問題は多くの組合が抱えており、仮に管理費が高いからといって、管理会社に管理費の削減交渉をしても簡単にはいかないでしょう。

「これ以上は無理です」「当社もギリギリの価格です」と言われてしまえば、交渉にもならないかも知れません。

しかし、じつは多くのマンションでは管理費が高く払い過ぎているため、管理費は削減することが可能です

目次
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マンションが抱える2つの資金問題

1.価格競争のない高い管理費設定

マンションが抱える資金問題の一つは「管理費が割高に設定されていること」です。

マンション分譲時にはデベロッパーの系列会社、もしく関係者会社が管理会社に決定しています。管理組合が管理会社を選ぶ仕組みがないために、サービスや価格による競争がありません。

そのため管理費設定は管理会社によっていかようにもなるのが現状であり、管理会社の利益となる管理委託費は必要以上に割高に設定されるのです。

これが管理費が割高になる原因です。30戸で管理費が年間700万を超えるマンションもあれば、50戸で年間の管理費が500万を切るマンションもあります。

この金額差はマンションの設備や管理委託仕様の差でしょうか?

必ずしもそうではありません。

多くのマンションでは管理費の見直しを行っていないために、適正価格以上に管理費が高いのです。特に竣工から日が浅い場合は、今の金額が適正であると思いこみ、実は管理費が割高であることが中々気づきにくいこともあります。

そして覚えておいて頂きたいのは、管理費を多く支払っていても初期の価格設定が高いだけであり、サービスの質が高いわけではありません。

多くのマンションでは管理費を払い過ぎていること、『割高な管理費』が一つ目の資金問題です。

2. 低く設定される修繕積立金

この割高な管理費とは対象に、修繕積立金は低く設定されています。

マンションには長期修繕計画があり、それに沿って修繕積立金を積み立てますが、長期修繕計画の期間が30年であっても、修繕積立金を30年で均等に按分することはしません。

管理費を高く設定しているために、修繕積立金を低く設定しなければ、マンションのランニングコストが上がってしまいます。それでは、分譲時には買い手がつかない可能性が出てきてしまうからです。

そのため段階的に値上げする段階増額積立方式と呼ばれる方法で修繕積立金を徴収するのです。分譲時に低く設定された修繕計画では、足りないため修繕積立金は必ず値上げされます

国交省も警鐘を促している!

実はマンションの管理を管轄する国土交通省は、この段階増額積立方式は推奨していません。むしろ、建物や設備の維持管理に生涯必要となる費用を竣工当初からできるだけ均等に按分して負担する均等積立方式を推奨しています。

マンションを建てた後暫く経ってから修繕一時金を徴収したり、月間の修繕積立金を増額させて、修繕計画を維持することができる積み立てを行いたいという流れは普通なのかもしれません。

しかしながら、将来的には平準化しつつ、良心的な修繕積立金が望まれます。

月3万を超えるような修繕積立金を徴収するマンションがありますが、それは、初期設定が低すぎ、不足分を借入れなどで補ったために、値上げが加速したパターンです。

マンションが抱える2つ目の資金問題は『修繕積立金の不足』です。

マンション管理費の危険信号

あなたのマンションは、前述したように管理費が高く、修繕積立金は安くなっていませんか?

「修繕積立金より管理費が高い」そのような価格設定になっていたら、危険信号です。

修繕積立金が値上げされ、将来の修繕積立は今の倍以上になっている可能性があります。10年単位や大規模修繕前に『一時金』と呼ばれるまとまった修繕金の徴収をするかも知れません。

本来であれば、支払いである管理費を抑え、修繕積立金をしっかりと積み立てるべきなのですが、残念ながら多くのマンションでは管理費が高く必要以上に支払っており、必要な修繕金が積立られていないケースが散見されます。

このような価格設定はマンションの危険信号

マンションが抱えるお金の問題

この状況を放っておくと修繕工事費が足りず、修繕積立金の値上げ、もしくは一時金が必要になります。

マンションで暮らしていく上で、日々のランニングコストが上がってしまい、住みにくいマンション、資産価値の低い売るに売れないマンションとなってしまうでしょう。

マンションの資金不足が招く問題

「割高な管理費、足りない修繕積立金」の対策を立てず、放置していると、どのようなことが起きるのでしょうか?

マンションの価値は立地と管理で決まります。そして、割高なままの管理費、足りない修繕積立金は決して良好な管理とは言えません。

修繕積立金の積立額はマンションの資産価値に直結しています。つまりこの状況を続けると資産価値が低いマンションとなってしまいます。

マンションの資産価値

例えば、割高な管理費と値上がりした修繕積立金により月々のランニングコストが5万以上かかるマンション、大規模修繕のために一時金の徴収で100万近く必要なマンション、これらのマンションに暮らしたい、購入したいと思えますか?

これらは極端な例ですが、一つ言えることは、運営資金が足りないマンションに暮らすのはとても不安なことです。

マンションの管理費を削減する方法

割高な管理費を改善し、修繕積立金に上乗せすることでマンションの資金問題は好転し始めます。そして管理費を削減する方法はいくつかあります。

管理費の削減にはいくつかの方法がありますが、ここでは4つの方法を紹介します。

1.管理会社を変更(リプレイス)する

マンションの管理費の中で大部分を占めるのは管理会社への管理委託費です。そこに価格競争を持ち込むことで、マンションの管理費は大きく削減することが出来ます。

こちらがリプレイスによる管理費の削減事例です。

管理費の削減事例

これら一部ですが全て実例です。また管理人の勤務時間の削減など管理仕様を下げているわけではありません。同一仕様で、管理委託費はこれだけ削減できます。

管理会社の変更についてはマンション管理会社の変更手順とメリット・デメリットで詳しく紹介しています。

また削減額の事例やどうしてこれだけの削減ができるかをマンション管理費の効果的な削減方法と事例紹介で詳しく紹介しています。

ただし、削減効果が大きい分、管理会社の変更には時間と手間がかかります。管理会社変更の一般的なスケジュールが下記になります。

管理会社変更スケジュール

これよりも短い期間で変更される組合様もあれば、9ヶ月かけて変更されて組合様もありますので、あくまで一例です。なお、今まで当社で管理会社の変更をされた組合様の合計の年間削減額は一千万円は超えています。

2.設備メンテナンス契約を変更する

マンションの設備であるエレベーターや機械式駐車場には定期的なメンテナンスが契約内容に基づいて実機されています。このメンテナンス契約を見直すことで管理費は削減でき、方法は以下の2パターンがあります。エレベーターを例にとって紹介します。

メンテナンス会社を変更する

メンテナンス会社にはメーカー系と独立系の2つがあります。メーカー系はエレベーターを製造している会社であり、自社製品のためのエレベーターには詳しく、メーカー系の方が安心という心理的なメリットもあります。しかし、反面コストは一般的には高めです。

独立系はメーカー系の反対です。エレベーターを製造しているわけではありませんが、コストはメーカー系に比べ安いのが特長です。

契約内容を見直す

エレベーターのメンテナンス契約には部品が傷んでいなくても定期的な交換を行うFM(フルメンテナンス)契約と消耗品だけを部分的に交換するPOG(パーツ・オイル・グリース)契約の2種類があります。

そのため、FM契約の方がPOG契約に比べ割高です。しかし保証範囲が広く、一部機器の交換が保証内容に含まれるため、突発的な高額の出費を必要としません。

なお、「委託契約から直接契約に変更する」という方法もありますが、これは管理費が削減できるかは何とも言えません。なぜなら、大手管理会社は数の規模によるスケールメリットがあり、エレベーター会社からすると、管理会社とは長く付き合いを続けたいと考えており、「直接契約にしてもコストは下がる」とはならない可能性があるためです。メンテナンス契約と管理費削減の関係で詳しく説明しています。

3.電気設備系統を見直す

電気設備を見直すことでも管理費を削減することができます。代表的なものは電子ブレーカーです。これはマンションだけでなく、スーパーは工場などでも広く取り入れられている仕組みです。

電子ブレーカーを導入することで、マンションの電気代の基本料金を削減できるようになります。

マンションの共有部で電気の使いすぎによる停電が起きない様に、すべての設備が同時に動いた場合の電気量を基本料としています。電子ブレーカーを導入することで、ブレーカーに内臓されたCPUがこれを制御し、一時的に契約電力を超えても、電気用品安全法で定められた許容範囲まで使用できるようにするものです。

電子ブレーカーの初期導入費がかかりますが、2、3年で償却できます。下記がその実例です。3年後には黒字化しており、15年後には200万円の管理費削減につながっています。

電気料金の削減

4.保険の内容を変更する

当社は保険代理店と業務提携があり、保険業法により詳細な金額を記載することはできませんが、保険の補償内容の見直しで保険料は削減できます。また保険の契約期間が1年であれば、5年契約に変更するだけでも削減効果はあります。

保険は削減することよりも、必要な際に必要な保険金もらえるが重要です。

そのため、入口よりも出口が重要であり、補償をしっかりさせることが管理費の削減よりも必要です。そのため、管理費削減には大きな効果はないかも知れません。しかし、効果はあり、他の対策と合わせて実施することで削減額も大きくなります。

災害も増え保険の重要性が増している!

ここ最近では、集中豪雨や土砂災害によりマンションも影響を受けることが多くなってきています。

実際に大きな被害はなくても、激しい雨が多くなると共用部分が徐々に劣化するため、次第に影響を受けてくることも考えられます。

これらは火災保険により保証されるものもあります。特に近年では、頻繁に発生しているため、損害保険会社の負担となって来ているようです。そのため、今後保険料更新の段階で、これらの保障が付いている火災保険料の値上げも想定されます。

金額だけではなく、保険の対象範囲についても、広すぎないか、一方で狭すぎないかなど定期的な見直しをすることが大切であると言えます。

また、保険会社によりますが、マンションの管理状況によってはその費用が節減できることも考えられますので、改めて確認されるのもいいかもしれません。

安心して暮らせるマンションのために

あなたのマンションは管理費の見直しを行ったことはなく、割高なままでしょうか?裏を返せばまだ改善できる余地があるということです。割高に設定されている管理費は必ず削減できます。

削減方法は効果は大きいが実行が難しいものから、効果は小さいが取り組みは比較的な簡易なものまであります。管理費を見直しされた組合様は、年間何百万単位という管理費を削減しており、数年後には何千万という差額になるでしょう。

まずは小さなことでも取り組みを開始することが何よりも大切です。

記事監修

マンション管理士:古市 守(ふるいち まもる)

管理会社変更をはじめとするマンション管理組合のコンサルティング、管理計画認定制度支援や事前審査担当、自治体のマンション調査、マンション管理コラムの執筆・監修などで活動。

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