修繕積立金の一時金が抱えるリスクと理事会がすべき対策

修繕積立一時金のリスク

マンションは必ず劣化していまいます。その劣化対策として修繕工事があり、そのために修繕積立金を積み立てています。今回は修繕積立金の一時金とは何か、そして一時金の問題と対策について考えたいと思います。

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修繕積立金の一時金とは

修繕積立金の一時金方式とは、毎月の修繕積立金とは別に、大規模修繕のタイミングや10年毎のサイクルなどで集める修繕金のこと</です。

この方式が採用されている背景としては、分譲時にマンションのランニングコスト安くみせるためです。マンションを購入される方は、総額のランニングコストは気にしますが、月々の管理費がいくら、修繕積立金がいくら、ということはあまり気にしません。

例えばマンション購入時「10年後に一時金として30万円が必要です」と説明をうけても「まぁ、払えるだろう」と考えて、あまり問題視することはないのではないでしょうか?

マンション購入時は数千万円の支払いをする意思決定をしているため、テンションが高くなっています。将来のさらに30万円程度となると、上記の通り「まぁ、払えるだろう」となってしまいがちです。

一方で、一時金で徴収される金額は管理組合によってバラバラです。30万円程度から場合によっては100万以上集めるケースもあります。

なお、居住年数によって一時金の支払額が変わるということはありません。一時金が必要な時期に、該当マンションの区分所有者であれば、10年の居住者も1ヶ月の居住者も同じように決められた金額を支払わなければなりません。

修繕積立金の一時金方式が抱えるリスク

この方式の最大の問題は、全区分所有者から遅滞なく集めることがほぼ不可能ということです。

国土交通省の調査では管理費の滞納があるマンションが3割を超えています。詳細はマンション管理費の滞納!理事会はどう対応するべきか?を参照いただけたらと思います。

月々の管理費を払えない方が管理費の何十倍もする金額を払うことはできないでしょう。

そのため、大規模修繕の工事が足りなければ銀行から借り入れを行い、その後修繕積立金の大幅な値上げを行って返済していく、もしくは修繕工事が行えないといった事態になってしまいます。

値上げを行うにしても、将来の負担増となるため、簡単に総会で合意形成することができません。『マンションの修繕積立金に関するガイドライン』でも以下のように記載されています。

段階増額積立方式や修繕時に一時金を徴収する方式など、将来の負担増を前提とする積立方式は、増額しようとする際に区分所有者間の合意形成ができず 修繕積立金が不足する事例も生じていることに留意が必要です。

将来にわたって安定的な修繕積立金の積立てを確保する観点からは、均等積立方式が望ましい方式といえます。

新築マンションの場合は、段階増額積立方式を採用している場合がほとんど で、あわせて、分譲時に修繕積立基金を徴収している場合も多くなっています。 このような方式は、購入者の当初の月額負担を軽減できるため、広く採用されていると言われています。

一時金方式は言ってしまえば、「修繕積立金の値上げの先送り」です。結局、修繕積立金として必要な額は変わらないからです。

仮に10年サイクルで一時金が60万円必要なマンションであった場合、月々5000円の上乗せして修繕積立金を払うか、まとめて60万支払うかという違いです。

我々は、月々5,000円を長期的に定額支払うことについては、あまり抵抗はありません。

しかし、短期的に60万円を一律はらうことに対しては、大きな抵抗感が生まれます。時間とお金はトレードオフであり、時間を長く取ることで少ない額で対応することができるからです。

一時金を集めるということは、将来の来るべき支出に備えて、結局は自分で積み立てる必要があるのです。

修繕積立金の一時金の対策

修繕積立金の徴収方法を見直す

まずは修繕積立金の徴収法を見直す必要があります。最も望ましいのは均等方式と呼ばれる、修繕に必要な額を計画期間で按分して、毎月の修繕積立金を集める方式です。将来にわたり値上げがないため、国土交通省も推奨している方式です。

次は段階式と言われる方式で、10年毎のサイクルで値上げをする方式です。

いずれにせよ、一時金方式は工事に必要な資金が大幅に足りなくなる可能性があるため、計画を切り替えていく必要があります。なお、決議方法については、規約に方式や金額のことが明記されていなければ、普通決議、規約に明記されていれば特別決議が必要です。

これについては、修繕積立金の値上げと決議の方法でまとめています。

管理費を削減する

修繕積立金を増やすために値上げをするのではなく、管理費を削減し削減した分を修繕積立金に上乗せする、という方法もあります。

例えば年額100万円の管理費を削減できれば、10年間で1000万円です。かなりの金額になります。こちらでマンション管理費の効果的な削減方法と削減事例をご紹介しているのでよければ確認してみてください。

また管理会社の見直しは削減としては非常に有効な手段です。

特に効果が大きいのは分譲時から管理会社が同じマンションです。これまでの経験上、分譲時から同じ管理会社が管理しているマンションで管理費が下がらなかったことはありません。

管理会社の見直し検討したい方はぜひこちらの記事もご確認ください。

参考リンク:【保存版】マンション管理会社の変更手順とメリット・デメリット

修繕積立金の一時金は見直しを

長期修繕計画は現時点の段階で将来の工事費を見積もるためにブレは出てしまいます。

そのため、均等式であれ、段階式であれ、一時金が必要になるケースはあると思います。しかし、初めから一時金方式を前提として長期計画しているよりは、遥かに良いのではないでしょうか?

初めから一時金方式を前提としていたとしても、将来を見据えていち早く計画を見直すことも非常に有効になってきます。

長年マンションで暮らすということを考えると、将来的な建物の劣化についても検討しなければならず、それを修復するには修繕積立金が必要となります。

その費用を早い段階から将来を見越して実施することにメリットが十分ある事は、これまで見てきたことから考えると容易に想像できるかと思います。

一時金方式の徴収をする管理組合様は、まずは修繕計画の見直しを検討してください。一時金をそのままにしておくと将来必ず問題になります。

記事監修

マンション管理士:古市 守(ふるいち まもる)

管理会社変更をはじめとするマンション管理組合のコンサルティング、管理計画認定制度支援や事前審査担当、自治体のマンション調査、マンション管理コラムの執筆・監修などで活動。

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