【保存版】マンション管理会社の変更手順とメリット・デメリット

管理会社の変更

「マンション管理会社の見直しを検討して欲しい」「管理会社を見直したほうがいいのではないか」という要望や意見が総会や理事会に提出されたことはないでしょうか?

もしくはそう考えたことはありませんか?

しかし管理会社を変更するといっても、

管理会社の変更は具体的にどう進めればいいのだろうか?
他の組合はどう対応しているのだろうか?
管理会社の変更にはどんなメリットやデメリットがあるのだろうか?

など様々な疑問があると思います。

そのためここでは、

  1. ルールに沿った管理会社を変更するための具体的な手順
  2. 管理会社を変更するメリットとデメリット
  3. 管理会社を変更した他のマンションの事例
  4. 管理会社変更の注意点

についてご紹介していきます。

また最後にここ最近で増えてきている「管理会社からの契約解除」についてもお伝えします。

目次
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自分たちの手でも管理会社の見直しを進めていただけるように、マンション管理にお悩みに理事、修繕委員、管理組合の方のために、管理会社見直しによる削減事例と見直し手順を一冊のE-Bookにまとめました。

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管理会社を変更するための具体的な手順

まずは管理会社を変更するまでの具体的な手順を説明します。マンション管理会社の変更については体系化された手順が存在しています。

組合との合意形成の方法やタイミング、マンション管理適正化法や管理規約に則った手続きなど、マンション管理会社を変更するにあたり遵守しなければならない法律やルールがあるのです。

それの流れをグラフにしたのが以下の図になります。

管理会社変更スケジュール

※管理会社変更における当社想定フローより

上記のフローと合わせてルールに沿った管理会社を変更するための変更手順について説明します。

1.問題点の洗い出し

まず前段階として「なぜマンション管理会社を変更したいのか」「マンション管理会社の変更を検討するのか」という変更理由を明確にする必要があります。

この理由が居住者への説明や臨時総会での議案の元になっていくからです。また最終1社を選定する上での選定基準となります。

理由付けにあたってはぜひマンション理事長インタビュー、管理会社を変更して思うことを参考にしてみてください。

2.管理会社の募集と見積もり取得のための現地調査

目的が明確になったら、次のアクションは管理会社への声かけです。問題を改善してくれる複数の管理会社に声を掛け見積作成を依頼します。

見積作成にあたっては現地調査が必ず必要になります。契約書の内容だけではマンションの状況や設備の状態が把握できないため、正確な見積が算出できません。

また現地調査時に管理会社へ直接要望を伝えることで、お互いに正確に状況を理解することにもつながります。

なお作成された見積りは現地調査から2~3週間後に、マンションの状況を加味した提案書と共に手元へ届きます。

3.提案書・見積もりの取得と管理会社の選考

現地調査を行った管理会社より提案書、見積もりが届きます。

これらの資料をもとに、管理会社からのプレゼンテーションを必ず実施します。このプレゼンテーションでどのような管理・サービスを提供する管理会社なのか、さらに予定フロント担当者やその上司、さらには管理会社のフォロー体制などを見極めていくことになります。

抱えている問題に対してどのような解決策が提示されるのかを確認し、最適な1社を選定します。1社に絞りきれない場合には、別日を含めて、各社個別に2回、3回とプレゼンテーションやヒアリングを行っても問題ありません。

4.内定管理会社との仕様詳細の確認・契約内容の確認

プレゼンテーションで1社に内定を出してもそれは契約ではありません。管理会社を変更するために臨時総会を開催し、管理組合で変更が承認されなければなりません。

そして、管理会社変更を審議する総会では、新たな管理会社との業務委託の内容が確定している必要があります。

そのため内定段階ではまだ確定していない仕様の確定作業を行います。

例えば小学生の下校時間まで管理人は勤務してほしい、マンションの清掃回数を減らしてもう少し管理委託費を下げたいなど、この段階で詰めていきます。

必ずしもプレゼンテーションの段階で管理会社が提示したメニューを、そのまま管理組合として採用する必要はありません。個別で具体的な内容を新たな管理会社候補と詰めていき、当初提示された金額や委託内容が変わっていったとしても、全く問題ないでしょう。

5.重要事項説明・臨時総会の実施

内定した管理会社より重要事項説明会で契約内容の説明が行われ、臨時総会で管理会社の変更を決議することになります。

管理会社の変更は、総会参加者の過半数の賛成で可決されることになります。必要議決数については普通決議と特別決議-マンションの総会決議の方法で詳細を説明していますので、よければそちらもご確認ください。

なお、管理会社を変更するということは管理委託契約の変更となります。マンション管理適正法にて管理委託契約の変更時には重要事項説明が必要と義務付けられています。

そのため重要事項説明会の後に臨時総会が行われるという流れになります。

6.解約通知

新しい管理会社との契約締結のため、現行の管理会社に解約通知を行います。業務委託契約の解約は原則として3ヶ月前通知が必要なります。(※契約書に解約の事前通知期間が明記されているためこれを確認します)

7.新旧管理会社との引継ぎ

解約通知後、新旧管理会社の引き継ぎが開始されます。この引継ぎは理事会立会いのもと行われ、管理図面や修繕履歴の書類、共有部の鍵、管理員さんの継続または引継ぎなどを含めて、新管理会社に業務を引き継ぎます。

これが管理会社変更の大きな流れです。変更までの期間は組合によって違い、当社のケースでは管理会社を変更すると決めてから総会で決議されるまでの平均は4ケ月ほど、最短で2ヶ月、最長で11ケ月です。

管理会社間の比較検討や区分所有者との合意形成など、余裕をもって考える場合であれば、少なくとも半年程度は見ておいてもよいかもしれません。

管理会社を変更するメリット

管理会社を変更するメリット

では、長い時間をかけて管理会社を変更するメリットは何なのでしょうか?大きなメリットは管理の質が上がること、そして管理費が下がることです。

1.管理会社の変更によって管理の質が上がる

管理会社を変更するメリットの1つは管理の質が上がることです。では、管理の質とはなんでしょうか?私たちが考える管理の質とは以下の3つです。

1.管理費が適切であり収支のバランスが取れていること
2.マンションの清掃・設備メンテナンスがしっかりと行われていること
3.修繕積立金がしっかりと蓄えられていること

最近では各自治体において、管理が適切なマンションにお墨付きを与える管理計画認定制度も始まっていますが、少なくとも上記の1~3が実現できているマンションは質の高い管理を実現していると言えます。反対にこれができていなければ問題を抱えている管理の質が低いマンションになります。

多くのマンションは修繕積立金が足りないと言われており、特に問題になってくるのは2回目以降の大規模修繕工事です。

日常清掃や定期清掃などの目に見えるものだけはなく、マンションの資金面に関してもしっかりと対応できていることが大事です。

2.管理会社の変更で管理費が下がる

管理会社を見直すもう一つのメリットは管理費が下がることです。

毎月支払っている管理費の中で最も多くを占めているのは管理会社への「管理委託費」です。 多い組合では管理費の7割以上を管理委託費が占めていることもあります。徴収している管理費よりも管理会社への委託費が高いケースもあります。

この管理委託費は管理会社の変更で必ず削減できます

削減できる理由は明確で初期設定の管理委託費が高いからです。

マンション購入時に管理会社を選ぶことはできません。なぜなら系列会社、もしくは関係会社が管理することが決まっているからです。そしてそこには管理委託費の価格やサービス内容による競争はありません。

そこに管理会社の変更を通じた競争の原理を持ち込むことで、管理の質を保ちながらも大きく費用は削減できます。

3.管理組合運営が向上する

管理会社変更により、理事会や総会などの管理組合運営にも効果が期待できます。

具体的には、以前の管理会社では足りなかった設備に関する具体的なアドバイスや、理事会支援・総会支援等の運営ノウハウ、大規模修繕工事に向けてのサポート、長期修繕計画の具体化、さらに決算資料の見やすさ、分かりやすさ等、ソフト面、ハード面双方の新たな改善も見込める可能性があります。

特にマンションの日常管理の質の向上や、費用面といった区分所有者に見えやすい改善だけではなく、管理組合に対するサポート業務は管理会社の重要な業務の一つのため、ここが改善されると、結果的に長期に渡って区分所有者にとってメリットは大きいと考えられます。

4.区分所有者の管理の意識が高まる

「マンションは管理を買え」と言われるほどにマンション管理は大切なものです。なぜならマンション管理はマンションの資産価値に直結しているからです。しかし、残念ながらマンションの管理は区分所有者のほどんどの方が人任せで意識が高い方は決して多くないのが実情です。

一方で管理会社を変更するとなった場合、多かれ少なかれそのプロセスに区分所有者の方は関わることになります。管理の見直しを通じて区分所有者のマンション管理の意識を高めることにつながります。そしてマンション管理をより良くするという意識が継続することにより、マンションの資産価値向上にも寄与します。

管理会社を変更するデメリット

管理会社を変更するデメリット

管理会社の変更によって管理の質の向上と管理費の削減が実現できますが、デメリットもあります。

1.業務の継続性が失われる

マンションの管理規約は一般的には国土交通省によって作成されている「マンション標準管理規約」に則って作成されています。そのため、マンションのルールはどの管理会社が管理したとしても基本的に変わることがありません。

しかし、管理組合とマンション管理会社が個別に交わした約束事があり、管理組合としてもなじみ深く受け入れている業務であるならば、そういった取り決めは場合によっては引き継いでいかねばなりません。

例えば、これまでの管理会社は管理員さんが必ず小学生の子ども達が帰宅する夕方4時まで勤務していたのであれば、新たな管理会社からくる管理員さんが午前中で業務を切り上げるというのは難しいでしょう。

手順が決まっている一般的な業務であれば問題ありませんが、管理組合独自のものがある場合はしっかりと引き継いでいく必要があります。

2.管理会社を変更することへの心理的な不安

一度も管理会社を変更したことがなければ、分譲以降、管理を委託してきた管理会社を変更することになります。

「自分たちのマンションのことをよくわかってくれている」「マンションを建てた会社と管理会社は同じ系列の方がよいのではないか?」「これまでの管理会社の方がブランドがあるのではないか?」

管理会社を変更してはいけない、建設会社がグループ会社でないとできない修繕工事がある、ということはありません。

しかし、管理会社を変更することによって問題が生じるかも知れないという不安を感じる方はいらっしゃいます。

マンション管理会社を変更した組合の声

こうしたメリット・デメリットがある中で弊社に問い合わせ頂き、管理会社を変更された組合様の声を紹介します。

ケース1:京都府の管理組合様

管理会社における業務において、フロントマンの失念・不備が、理事会がある度に発生しその都度お詫びはあるが、一向に改善しません。これまで管理会社の見直しを実施したこともなかったので、一度きっちりと管理会社を見直す方向で当理事会は対応していこうと考えています。

ー京都府 理事長

こちらの組合様は一度や二度の失敗から見直しを検討されたわけではありません。何度依頼しても改善しない管理会社の体質に疑問を持ち、そこから管理会社変更の検討が始まりました。検討を進めていく中で管理会社の書類の管理不備や紛失も見つかりました。

ケース2:埼玉県の管理組合様

20年間にわたって同じ管理会社に管理業務を委託しており、これといった不満はないのですが、これまで管理費面で他の管理会社との比較検討をしたことがないため、組合員から調査希望がでています。御社の推薦する管理会社数社から見積もりを取得いただけないでしょうか?

ー埼玉県 理事長

この組合様は現状の管理会社に対して不満があったわけではありません。しかし、マンション管理に関する意識が高まっている中、管理会社への管理依託費を見直そうという流れがきっかけでした。なお、基本的に現行仕様と同じまま過剰仕様を整備し、管理会社の変更で管理依託費は下げることができました。

ケース3:東京都の管理組合様

管理費が高いと感じています。また、小規模修繕費について見積額が不透明で高いと感じることが多く、担当者の対応も問題があると思います。数年後に大規模修繕を予定しているので、出来るだけ管理費を抑えたいと思っています。

ー東京都 理事長

この組合様はすでに管理会社を変更する前提でした。管理会社を変更すると決めたのは、担当者の対応と管理費や小規模修繕工事の不透明さでした。またその日常の問題が大規模修繕の工事費不足につながると考えられており、早めに手を打ちたいとのことで、管理会社の変更を決定されていました。

ケース4:東京都の管理組合様

管理会社から契約解除の連絡がありました。早急にマンションの管理を引き受けてくれる管理会社を探しています。ご協力よろしくお願いします。

ー東京都 理事長

ここ最近増えているのがこの管理会社からの解約通知です。管理会社がいなくなることで問題になるのはゴミ出しや清掃などの面だけではなく、管理費・修繕積立金の徴収や支払いなどの出納業務も滞ってしまいます。特に小さなマンションで解約されるケースが多く散見されますが、マンション規模にかかわらず取り組んでいる管理会社を見つける必要があります。

その他にも「これが管理会社の見直し理由!実例から学ぶ管理会社変更のきっかけ」という記事で、実際に当社に問い合わせ頂いたきっかけをご紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。

管理会社変更のきっかけ

他にも様々な声を頂いておりますが、積もり積もった不満があり「管理会社や担当フロントマンへの不満」と「管理費や修繕積立金など資金の不安」がきっかけとなって管理会社の変更をされています。

そして、冒頭でも紹介していますが、最近増えてきているのが管理会社からの契約解除です。

なお契約解除のケースを除いて、多くの管理組合様が管理会社の変更に求めているのは、管理費を削減することだけでなく、『管理の質の改善』と『管理費の削減を通じたマンション会計の改善』になります。

当社が独自で実施した「マンションの管理で優先するのは質かコストか」というアンケートに関しても、8割以上が「管理費よりも管理の質を優先する」との回答でした。

管理会社の変更で失敗しないための2つの注意点

管理会社変更、2つの注意点

これまで数多くの管理組合様に対して管理会社変更を支援してきた当社として、管理会社の変更によってマンションの管理は必ず良くなると確信しています。それは不満からの改善でも、契約解除の場合でも同じです。変更によって必ず管理は上向くと考えています。

但し、管理会社の変更によって質の低い管理会社を選んでしまうと改善ではなく、改悪してしまう恐れもあります。そのため最後に管理会社選定の注意点をご紹介します。

1.管理会社を金額だけで選ばない

管理会社を選定する上での注意点は「金額」だけで選ばないということです。

前述の通り、管理会社は競争によって選ばれたものでありません。そのため、管理費の初期設定価格は管理会社が指定した価格です。

管理会社の変更を検討することで、価格とサービスに競争が生まれるので、管理費の削減と管理の質の向上します。

この時、管理会社の変更で各管理会社が提出してくる価格は勝負価格です。これは勝負価格なので、高いには高いなりの、安いには安いなりの理由があります。

そこをしっかりと管理会社を変更するまでの管理会社とのやり取りやプレゼンテーションで見極めなければいけません。

例えば、管理人は正社員か、パートや業務委託か?正社員として管理人を雇うという事は、雇う側の会社に掛かる責任や負担が大きくなるため、管理人の人件費は高くなるでしょう。しかし、社内では研修が充実しているため、良い仕事や継続して業務を続けてもらえるなどの期待もできます。

反対にパートの方であれば、正社員と比べて人件費は安いでしょうが、継続して続けてもらうことは難しいかも知れません。業務委託であれば、管理人としての専門性は高いものの、その分費用がかさむことも考えられます。

これは一般論であり、正社員や慣れた業務委託でも適当な仕事しかしない人もいれば、パートでも期待以上の仕事をしてくれる方もいらっしゃいます。

ただ、ここでお伝えしたいことは、価格が高い、安いの理由をしっかりと見極めるということです。

価格を下げるためだけに管理会社を見直すのではなく、管理会社を見直した結果、管理費も下がるということが重要です。

2.管理の質を落とす変更はしない

管理会社を変更して確かに価格は下がったが対応の不満を感じる、といった内容の問い合わせをいただきます。

管理会社を変更したけど、あまりに対応が悪かったので1年でもとの管理会社に戻した、という話もあります。

マンションが存在しつづける限り管理に終わりはありません。マンションを解体するまで管理は続きます。

管理会社の変更の結果、良くなるはずのマンション管理が悪くなってしまっては本末転倒です。

自分たちのマンションを任せよう、任せてもよいと思える信頼できる管理会社を選ぶことが重要です。

そのためには、管理会社変更前と変更後の管理内容を同一のままで管理費を下げるのか、または管理内容を減らして管理費を下げるのかなど、管理組合として十分な検討は必須であると言えます。

管理会社からの契約解除への対応について

これまでは管理組合から管理会社を変更する方法についてメインでまとめましたが、管理会社からの契約解除の場合はどう対応すればよいでしょうか?

契約解除であっても基本的には流れは同じです。

  1. 管理会社の募集
  2. 管理会社による現地調査と見積もり取得
  3. 管理会社によるプレゼンと内定
  4. 管理会社との契約確認
  5. 重要事項説明会と臨時総会
  6. 新管理会社による管理スタート

となり、契約解除までに時間があれば余裕をもって進めればよいですし、逆に時間がなければ超特急で進めることになります。

なお国交省標準の契約に準拠していれば解約は3ヶ月前通知が義務となっていますが、多くのケースでは、フロントマンからの通知があり、その後管理会社から正式な連絡が届くという流れが多いようです。

一方で管理会社から契約解除を伝えられたとしても、管理組合としては新たな管理会社が見つかり、引継ぎが完了するまでは契約延長を含めて管理委託契約を継続して欲しいという点は必ず主張するべきです。

少なくとも担当の管理会社が不在であるという空白期間は避ける必要があるでしょう。

まとめ

管理会社の変更方法について説明させていただきました。

管理会社の変更には多少なりとも苦労が伴いますが、多くの組合様は管理会社を変更し、管理の質の改善、管理費の削減と修繕積立金の改善を実現しています。

もし、今の管理会社に疑問をお持ちであれば、長く安心してくらせるマンション実現のために、管理会社の変更を検討してみることをおすすめします。

必ずマンションの管理は良い方向に向かいます。

記事監修

マンション管理士:古市 守(ふるいち まもる)

管理会社変更をはじめとするマンション管理組合のコンサルティング、管理計画認定制度支援や事前審査担当、自治体のマンション調査、マンション管理コラムの執筆・監修などで活動。

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