マンション管理の質とは
マンション管理の目的は、入居者の生活の安全性・快適性とマンションの資産価値を維持・向上させることにあります。この目的を真に達成するに足る活動をしているのかどうか、これが「マンション管理の質」の問題です。
マンションの一生は、人の一生と同じ?
仮に、壮年・熟年になっても健康でいざというときの蓄えがある人は、それまでどんな生活を送ってきたのでしょうか。余程幸運に恵まれた人でない限り、おそらくは、毎日を漫然と過ごすのではなく、健康を維持するための工夫や努力、蓄えをするための日々の倹約や計画をきちんともって生活してきた人なのではないかと思います。
管理を行い、しかっりとした人生計画を立ててきたと言えるのではないでしょうか?
マンションにも同じことがいえます。新築のマンションが年を重ね築15年、20年となったときに、マンションの外観・玄関など共用部の美観が保たれ、また建物・設備に故障がない新築時と同様に健康な状態であり、修繕積立金がきちんと確保されているなら、そのマンションはよく管理されてきたマンションであるといえるでしょう。
マンションは、人と同様に老化(経年劣化)が避けられませんが、これを最小限に食い止め、マンションが竣工時のように健康でいる、また、蓄えがある状態をつくる、つまりマンションに幸福をもたらすのは、人の場合と同様、日々の工夫や努力、計画であり、このような日々の活動をしているマンションの管理が「質の高い管理」に他なりません。
管理費の支出と修繕積立金の蓄え
経費の支出にはバランスが必要
人が健康を維持するためには自分の身体に何らかの投資が必要かと思いますが、これが度を過ぎれば蓄えができない。さりとて、何もしなければ健康を維持できず蓄えの元となる仕事が出来ない。健康と蓄えは車の両輪のようなものです。
マンションも同じです。例えば、美観を維持したいとして清掃費や修繕費などの維持管理費をふんだんに投入すれば、確かに綺麗で安全なマンションになるのでしょう。しかし、それでは、管理費は上がる一方で修繕積立金は全然貯まらないということになります。
ここに何らかの工夫が必要なのです。古くても清掃が隅々まで行き届いている、どこか風格を感じさせるマンションがあります。
そういうマンションを見て考えるべきことは、マンションのエントランスの清潔度合いによって資産価値が左右されるということだけではなく、むしろ大事なのは、このような清掃がなされるためにどのような工夫がなされているかという点だと思います。
ただ清掃員の人数や作業時間を増やしただけなのか、それとも、作業手順に工夫を加え効率的・効果的なマニュアル改定をしたのか、フロントマンのきめ細かな指示によるものなのか、などです。
管理費会計が苦しくなってこれまでの夫婦住み込み常駐管理体制が難しくなってきた時に、常駐管理をやめて日勤方式にしたり、管理人体制自体を廃止すれば、簡単に経費節減できるでしょう。そうせざるを得ない場合もあります。
しかし、いや、そうではなくて何とか経費節減して入居者が安心するこれまでの常駐管理体制を維持しよう、そのために管理員と清掃員を兼務させようとか、これまでの2名体制から1名体制の交代制で回していこうとか、それまでの水準を保ちながら経費を削減する可能性はあり得るのです。
マンションの現状や特質に合わせて管理に関する様々な事柄について不断の検討を加えることはマンションの「健康」と「蓄え」を同時に維持するために不可欠であり、このような努力をする管理が「質の高い管理」です。
管理向上のための努力は誰が担うのか?
マンション共用部管理の責任は区分所有者の集合体である管理組合にあります。それゆえ、区分所有者の一人一人が日々の生活で得た管理にかかわる情報を管理組合にフィードバックしこれに検討を加えること、これは、マンションの健康にとって、とても大切なことです。
しかし、言うまでもなく、それぞれのマンションの現状や特質を十分に把握し、工夫や提案をすべきなのは、プロとしてマンション管理を受託した管理会社です。
管理会社の「管理の質」の判断基準
健康の維持や蓄えをするためには、不断の努力と工夫が必要で、管理の内容が昔のまま何も変わらないということはあり得ません。管理会社には格別の不満はないが「管理内容は昔のまま、十年一日のごとく」そのようなマンションがあったら、そこでは「質の高い管理」がなされていない可能性が大いにあります。
「質の高い管理」をする管理会社は、フロントマンが頻繁にマンションを訪れ現状の問題点を吸い上げようとするでしょうし、そこから得られる情報だけでなく、社会・経済情勢の動き・技術革新などに伴うコストダウンの可能性、助成金の活用、こういったことに常にアンテナを張って、適宜、何らかの新しい提案をするはずなのです。
管理の質を上げるには?
「十年一日のごとく」の管理を続けているマンションが、いずれ「若いときに何も考えずに漫然と生きてきたツケが歳をとって廻ってきた」となるのは目に見えています。
そうなる前に「質の高い管理」を目指す管理組合の取り組みの一つが、「質の高い管理」をすることのできる管理会社への変更(リプレイス)があるのではないでしょうか?