管理会社との契約更新時における管理組合が注意しておきたい事項8選
管理会社との契約更新時において、管理組合が内容を確認する段階で迷うこともあるでしょう。
総会では、重要事項説明で説明されたのちに、管理委託契約を締結するかどうかの決議が中心のため、とりわけ事前の理事会での討議と、重要事項説明会を含めた場が重要になります。
今回のコラムでは、理事会と重要事項説明、さらにはその後の総会開催の際に管理組合として注意しておきたい事項を中心に紹介します。
理事会での事前検討事項
まずはじめに、理事会での検討事項について紹介します。
管理会社から事前に管理委託契約の更新の話がでるのは、多くの場合は理事会になると考えられます。
その際には、必ず管理会社からの契約案や見積もりが提示されることになります。
理事会において事前に確認しておきたいことを紹介します。
管理組合としてコスト削減が必要であることを説明する
前提として、管理組合においては常にコストを意識して運営されていることでしょう。
コストを度外視して、管理費がいくら高くてもよいという管理組合も中にはあるかもしれませんが、ほとんどのマンションは、コストが上がるとなぜ上がるのかという視点に立つと考えられます。
そのため、管理組合としては、コストが前回と不変であればまだ了承できるかもしれませんが、逆に上がった場合は、簡単には了承できないことも多いでしょう。
したがって、常に「自分たちはコスト削減が必要である」ということを意識しながら、コスト増に対するけん制も重要であると考えられます。
それによって、管理組合としては、管理会社から「値上げが必要です」と簡単に言わせない可能性も考えられます。
重要事項説明会や総会の直前になって言うのではなく、管理組合や理事会としても普段から意識的に管理会社と健全なコミュニケーションを取っておくことが求められます。
これまでの業務の中で削れるものは無いか十分確認する
理事会側としては、今後の管理委託契約のためにも、常に管理委託業務の中で削れるものはないのか、チェックしていくことも重要です。
単に「値下げして欲しい」ということでは到底応じて貰えないでしょう。
その代わりに、業務を減らしてその分を管理委託費の中から削減できないかどうか、常に検討していくことも一つです。
管理委託費が値上げの場合は理由や詳細を確認する
普段から管理組合として、管理費の値上げは避けたいというコミュニケーションがあっても、やむを得ず管理会社から「次期の契約はこの金額で検討して欲しい」という要請も考えられます。
どの管理会社も営利企業であるため、適正利潤を確保しないと会社の存続の問題になってしまいます。
そのため、管理会社としても辛い局面ではあるものの、値上げを要請して来る可能性も考えられます。
最近の人件費や材料費の高騰、さらには管理員等のなり手不足で、給与を上げないと来てもらえないといった課題も存在します。
値上げの場合は、管理会社側がなぜ値上げするのかを詳しく確認しておく必要があります。
理事会としても、総会で区分所有者に説明する責任も考えられるためです。
管理会社から業務上見直しできるものは無いか提案して貰う
もし、管理会社からの値上げの要請があれば、業務上見直しを行うことによって、管理委託費を削減できないか、またせめてこれまで同様の金額で据え置きが出来ないかを交渉すべきです。
そのうえで、管理会社から、「ここを減らせば月間5万円減ります」などの具体的な提案を貰う必要があります。
当然、新たな提案により管理の質が落ちる可能性もあります。
したがって、金額を減らしてまで質を落とすのかどうかは、理事会としても十分検討する必要があります。
重要事項説明時の確認事項
次に、重要事項説明時に注意しておきたい確認事項を紹介します。
実質、このタイミングが、区分所有者に対して今後管理委託契約を締結することが適切かどうか判断する材料となります。
したがって、区分所有者にとっては、総会以上に重要な場であると言えるかもしれません。
重要事項説明会を総会と切り離して開催して貰う
管理組合にとって、前回までの契約内容に対して不利になる場合は、区分所有者に対する重要事項説明会が必要となります。
不利になる場合とは、おもに
・従前の契約と内容及び実施方法が同一であるにも関わらず、委託金額が増額される
・従前の契約より管理事務に要する費用の支払いの時期を前にする
・従前の契約より契約期間が長くなる
などが当てはまります。
また、区分所有者に対する管理会社からの重要事項説明会は、総会より前に実施する必要があります。
多くの管理組合では、区分所有者や役員の手間を考えて、重要事項説明会と総会をまとめてやることが多いです。
ただ、同日開催が多い中で、重要事項説明の内容の中で不確かなものが出てくる可能性も考えられます。
さらに、重要事項説明会は、総会前の「あらかじめ」のタイミングで開催すればよく、同じ日に開催する必要は必ずしもありません。
そのため、管理会社からの説明後に検討する時間を確保する意味でも、重要事項説明会と別日に総会を開催することも考えられます。
変更箇所がある場合は分かりやすく明確に示して貰う
重要事項説明書の中では、どれが変わったのかが分かりづらい可能性もあります。
そのため、対比表などで変わった箇所と変わった理由などを、マンション管理に不慣れな区分所有者に対して、管理会社から示してもらうことも必要でしょう。
例えば、人件費の高騰による管理委託費の増加であれば、管理員さんの時給がいくら上がるのか、また人件費に含まれる社会保険料の金額がどうなるのか、さらには残業代なども細分化して提示して貰うことも考えられます。
それぐらい管理組合としてはコストに対してシビアに見ているということを伝えるべきでしょう。
管理組合総会での確認事項
実際に管理委託契約を締結を決めるのは管理組合総会になります。
その際に注意しておきたい事項を紹介します。
理事会や役員として契約更新に対する補足説明が求められる
これまでの契約と金額や管理委託内容面での変更がなければ、区分所有者から了承される可能性も高いでしょう。
しかしながら、管理委託費が上がってしまう場合は、総会で了承して貰うための補足説明も理事会や役員として必要となります。
管理委託契約の期限があるとはいえ、総会には理事会の決議を経て諮っているためです。
そのため、なぜこの金額や管理委託内容で総会に諮ることにしたのか、区分所有者に説明することも求められるでしょう。
多くの場合は、総会開催時に管理会社も参加していますので、管理会社から改めて補足説明をしてもらうことが重要です。
万が一総会で管理委託契約締結案が否決される場合は?
理事会決議とともに、重要事項説明会を経て、総会に管理委託契約締結議案が提示される訳ですが、万が一議案が否決されるとどうなるのでしょうか?
恐らくはこのようなことが起きるケースはレアかと思いますが、次の管理委託契約が整うまで、現管理会社と暫定契約を締結することが考えられます。
またその場合は、一旦は契約期間満了後も、金額、管理委託内容など同一条件を継続する形態です。
しかしながら、応急処置的な暫定契約であっても双方の合意が必要なため、決裂しないように整えて行く必要があります。
この間に管理組合は、管理会社から契約解除を申し入れられてしまうと、さらに手間が掛かることとなります。
そのため、新たな管理委託契約が問題なく締結できるように、否決された要因分析とともに、改めて管理組合内での合意形成も非常に重要といえるでしょう。
管理委託契約締結においては様々な角度から検討したい
今回は、管理会社との契約更新時における管理組合が注意しておきたい事項を紹介しました。
管理組合としては、単なる書類のやり取りに過ぎないかもしれないですが、管理会社との取組の中では、契約内容においては様々な角度から多面的に検討する必要があります。
また、管理組合、管理会社双方にとって納得がいくような内容になるようにしていくことが非常に重要です。
そのためにも、管理組合内では合意形成が重要であるとともに、管理会社からの説明を十分に受けるようにする必要があるでしょう。