求められるものは管理費の削減よりも管理の質の向上
「住居を購入する」ということは人生において大きな買い物です。マンションを購入した場合は、毎月の住宅ローンに加えて、管理費と修繕積立金は必ず払わなければいけません。
住宅ローンを払い終えても、マンションの組合員である限り、管理費と修繕積立金の支払いは発生しづつけます。
「管理費」はマンションにとっての支出にあたるため、余計な支出であれば、それは削減すべきです。実際に、マンションの管理費は割高であり、支払いすぎているケースが多く存在しています。
そのため管理会社の見直しによって、マンションの管理費を適正化し、管理費の削減に成功している管理組合様も多くいらっしゃいます。
一方で無理な管理費削減をした結果、管理の質が下がってしまっているケースも残念ながら存在します。
後者のケースが増えたためか、最近の管理会社の選定の条件は「管理費が安いこと」ではなく、「管理の質」を重視されている気がします。
当社サービスで管理会社を変更いただいた組合様でも、管理の条件が良いことから、管理委託費が一番高い管理会社を選ばれるというケースであったり、多少管理費が上がってもいいから、もっと質の高い管理をしてくれる管理会社を紹介してほしいと相談をされるケースが増えています。
マンション管理はソフトのサービス
「管理の質」について考える前に、管理組合が管理会社に委託している業務は何でしょうか?それらは大別すると4つに分類することができます。
業務 | 内容 |
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事務管理業務 | (1)管理組合の会計の収入及 び支出の調定 (2) 出納 (3) 本マンションの維持又は修繕に関する企画又は実施の調整 (4)理事会支援業務 (5)総会支援業務 |
管理員業務 | (1)受付等の業務 (2)点検業務 (3)立会業務 (4)報告連絡事務 |
清掃業務 | (1)日常清掃 (2)特別清掃 |
建物・設備管理業務 | (1)建物点検、検査 (2)エレベーター設備 (3)給水設備 (4)浄化槽、排水設備 (5)電気設備 |
※詳細はマンション管理会社について知っておくべき4つの基礎知識を確認ください。
まず、居住者の方がもっとも接するのは管理人になります。これは人の手によるサービスです。管理人は「管理業務」と「清掃業務」の両業務をうけおっており、小規模のマンションであれば一人で両業務を全て行っています。
これらの業務はコンピュータで処理してるわけではなく、人の手によって行われるものです。
そのため、管理人の方の業務が厳しくなるような仕様での削減、例えば、勤務時間を短くして管理委託費を下げるような仕様であれば、管理費の削減は実現できるかもしれませんが、質の向上は望めないでしょう。
例えば、勤務時間が短かければ、管理人はマンションの巡回の回数や清掃時間を減らさざるを得ないかもしれません。ゴミが残っている、共有部の電球が切れている、これらの事柄に居住者の方は気づくでしょうが、管理人は気付かない可能性が高くなります。
「なぜいつまでも電球が切れたままにしておくのか」「なぜ清掃業務をしっかりとやらないのか」という指摘を受けるかもしれませんが、できない背景には無理な管理費の削減があるかも知れません。
「うちのマンションにはいい人を」とどの組合様も思っていらっしゃるのですが、無理な削減をしてしまうと良い管理人に回り会える確率は低くなるのではないでしょうか。
また管理費削減が進みすぎた結果、担当フロントマンが巡回にもこず管理人と連携が取れていない状況、管理人だけが矢面に立たされているような状況では、会社との連携も取れず、質の高い管理の実現は難しいのではないでしょうか?
マンション管理を見直したい
「管理費を削減したい」という要望をいただくのですが、「マンションの管理を見直したい」という相談も多くいただきます。つまり現在のマンション管理に困っているということです。
相談事例で、管理人が座っているだけで決められた清掃業務をしない、受付業務に対応してくれない、などがあるのです。管理人が対応してくれなければ、相談者は管理会社、もしくは理事会に相談するでしょう。
居住者からすれば「たらい回し」、理事会からすれば「業務をしていない」と映ってしまいます。
しかし、管理会社側からすれば、それは当たり前なのかもしれません。
なぜなら、管理会社側からしても、無理な削減額の上で受託したマンションであれば、良いサービスを提供して信頼を勝ち取る、というよりは、マンション管理にはできるだけ時間をかけずに稼げるところで稼ぐ、つまり修繕で取るというようなスタンスになってしまう可能性があります。
その場合、管理会社と管理組合で良好な関係を築くのは難しいでしょう。
これからのマンション管理
2、3年ほど前までは、「管理費はとにかく安く」という風潮にあった気がします。その結果、無理な管理費の削減を求めすぎたのかもしれません。
マンションの管理を行っていく上でやはり、「適正額」は存在すると考えており、そのための最適なパートナーを選ぶということが重要です。
「管理費が高すぎる」という事実があるという一方で、「管理の質が低くて困っている」という組合様もいらっしゃいます。
これらを改善するためには「マンション管理を見直し適正額にする」ことはこれからのマンション管理に必要なことだと考えられます。