マンションの管理費と修繕積立金!それぞれの役割と対応すべき問題と課題

マンションの管理費と修繕積立金

分譲マンションを購入すると必ず支払わなければならない費用があります。それが、『管理費』と『修繕積立金』です。

ここでは、管理費と修繕積立金の役割と用途、そしてそれぞれが抱える問題と課題について説明します。

目次
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マンションの管理費とは

快適なマンションライフを維持するためには適切な管理が必要であり、管理費はそのための運営費用です。

管理費はマンションの共有部のものであり、各住戸(占有部)に対して支払うものでありません。(※管理人室の光熱費は占有部ではないため、管理費から支払われます)

具体的な言い方をするならば、マンションのエレベーターや廊下など共有部分、敷地、設備のメンテナンスや維持の費用であり、マンションを快適な状況に保つための管理組合の運営費用になります。

例えば、夜遅くに帰ってもマンションの電気がついているのは、管理費から電気代が支払われているからです。

マンションが清潔に保たれているのは、清掃員の方の日々の清掃や、専門の用具を使って行われる定期的な清掃が実施されているからです。各居住部から出たゴミが決まった日に整理されゴミ出しされているのも同様です。

また事故を未然に防ぐためにエレベーターの点検が実施や、また普段は目にすることが少ない貯水槽などがメンテナンスされているのもマンション管理が適切に実施されているからです。

これらの業務を実現するために管理費を毎月払っているのです。「マンションは管理を買え」と言われる所以でもあります。

では実際に支払っている管理費の具体的項目について見てみます。設備などによって違いはありますが、一般的な管理費の用途の一覧は以下の通りです。

管理費の利用用途

項目内容
光熱費共有部の電気料金(外灯、階段、廊下、エレベータの動力費等)
共有部の水道料金(散水栓、ゴミ置場、共有設備等)
共有部のガス料金(ガス設備)
組合運営費理事会運営費
総会費(会場費用、印刷代等)
通信費(電話代、郵便代、ファックス等)
備品費(掃除道具、電球など)
管理委託費収支の予算作成、出納管理、理事会の開催、運営支援、
管理人業務(受付、巡回、立会業務、事務・連絡報告等)
清掃業務(共有部の日々の清掃、定期的な清掃)
設備点検業務(ポンプや受水槽の点検、エレベーターの点検等)
保険料対象物件の損害保険
予備費余剰額の予備
その他町内会費、銀行振込手数料等

「管理費」と一口で言っても、実に様々な費用が支払われていることがわかります。

「管理費」というと、何となく管理会社への支払いをイメージしがちですが、管理費とはマンションの所有者が管理組合に支払うもの、そして管理費の中から管理会社に支払っているものを「管理委託費」と言います。

「管理費が高いので何とかしたい」そう思った時に、どの部分どうするのかを考えるとよいです。例えば、電気料金が高いから一括受電などを取り入れるのか、保険料の削減のために契約内容や期間を見直すか、そもそも管理会社に支払っている管理委託費は適正なのか、など、普段高いと感じている項目をしっかりと明確化しておくと、削減も効率的に進めることができます。

マンション管理費が抱える問題

マンションの課題

さてこの管理費ですが、年額にするとかなりの額になります。削減の事にも少し触れましたが、この管理費は1つ大きな問題を抱えています。それはどのような問題でしょうか?

結論から先に述べますと、実はマンションの管理費は割高に設定されています

管理費は割高に設定されている!

様々な項目を支払っていると説明させていただきましたが、その中で割高に設定されているのは管理会社への支払いである「管理委託費」です。

なぜ管理委託費が高くなるのか、それはマンションの販売構造にあります。

マンションの分譲時にはサービスや価格による競争の原理が発生しないために、管理会社側の収益である管理費は高く設定され、そのバランスを取るために、マンションの貯金である修繕積立金が低く設定されるのです。

管理委託費は適正化する必要性がある

多くのマンションでは管理委託費が割高に設定されています。そして中には必要でない管理項目があったり、過剰スペックの管理仕様になっていたりするケースが多くあります。

冒頭に記載している通り、快適なマンションを維持するためには適正な管理が必要です。管理費は安ければいいというものではありませんが、同時に高ければ安心というものでありません。

無駄に支払っている費用があるのであれば、それは今すぐにでも削減するべきです。そのため管理費は無駄を省いて削減し、同じ額で業務内容の質を高めるがポイントです。

マンションの見直しを検討する

費用削減のために一度マンション管理の見直しをされることをお勧めします。この見直しによって年間管理委託費の2割、100万、200万という単位で削減をされる管理組合様は多くいらっしゃいます。

見直しにおいては、管理会社が参加する理事会ではなく、理事だけが参加する分科会を実施し、実際に管理費についてしっかりと向き合ってみることも、管理組合にとって必要な事ではないでしょうか。

管理会社の見直し手順についてはマンション管理会社の変更手順とメリット・デメリットで詳しくまとめています。

また、管理費の適正価格については国土交通省の統計情報であるマンション総合調査をもとに、戸数別、地域別でみるマンション管理費の相場で詳しく紹介していますので、こちらも参考してみてください。

マンションの修繕積立金とは

修繕積立金について考える

ここまでは管理費でしたが次は修繕積立金についてご紹介します。

マンションは必ず劣化してします。これはどのようなマンションであっても避けることはできません。この劣化の進行をとめ、適切なメンテナンスを行い、マンションの寿命を延ばしていくのが修繕工事の役目です。

この修繕工事を行うために毎月積立ていくお金を「修繕積立金」と言います。

管理費を毎月の支払いとするのであれば、修繕積立金は毎月の貯金になります。

修繕積立金は日常の劣化や補修から、外壁の補修や塗装、排水管の取り替え工事の費用、また設備の更新費用などに使われます。

中でも大規模修繕工事は十数年おきに必要になるもので、頻度が低い分、金額も百万から数千万、マンションの規模によっては億という単位でかかるケースもあります。

では実際に、修繕積立金が必要となる工事を見てみましょう。

修繕積立金で行う工事の一覧

修繕工事項目対象箇所
屋根防水屋根防水等
外壁等躯体、タイル、塗装、シーリング等
床防水等開放廊下・階段、バルコニーの床等
鉄部等手すり、扉、盤、鉄骨階段等(塗替)
建具・金物等玄関扉、窓サッシ、郵便受等(交換)
共用内部等管理人室、エントランスホール等の内装
給水設備給水管、受水槽、高置水槽、給水ポンプ等
排水設備雑排水管、雨水管、汚水管、桝等
ガス設備等ガス管等
空調・換気設備等換気扇、ダクト等
電気設備等電灯、電気幹線、避雷針等
情報・通信設備電話、テレビ共聴、インターネット設備等
消防設備自動火災報知器、屋内消火栓、連結送水管等
昇降機設備駆動装置、カゴ等
立体駐車場設備自走式の構造体、機械式の構造体・駆動装置等
外構・附属施設駐車場、自転車置場、ゴミ置場、通路、公園等

『マンション管理標準指針コメント』より抜粋

修繕工事による資産価値向上

修繕積立金はマンションのメンテナンスだけでなく、マンションのグレードアップ(資産価値向上)のために行われることがあります。以下がその工事の一例です。

  • 玄関ホールの自動ドア化によるオートロックの設置
  • 宅配ボックスの設置
  • スロープや手すりの設置などのバリアフリー化
  • 太陽光発電、屋上緑化などのエコ対応
  • エレベーターのリニューアル
  • 雨漏りを防止するための屋上防水工事

このような資産価値をアップするための工事も修繕積立金を使って行います。

マンションの修繕積立金が抱える課題

割高に設定されていることがマンション管理費の問題でしたが、修繕積立金の課題は低く設定されて過ぎていることです。

修繕積立金の設定額が低すぎる

なぜマンションの修繕積立金は低く設定されるのでしょうか?

それは管理費を高く設定し、修繕積立金も国交省が提唱する適正額(平米あたり200円)としてしまうと、マンション購入後に発生するランニングコストが高くなってしまいます。

それでは新築の分譲マンションが売れません。

そのため、高く設定される管理費とは裏腹に、修繕積立金は低く設定されるのです。実際に新築の分譲マンションで修繕積立金が管理費より高く設定されている物件はだれも見た事がないでしょう。

負債を未来に先送りしている

このようなことになるのは、新築マンションは修繕積立金を将来に先送りにしている、いわゆる「段階増額積立方式」を採用しているからです。

国交省としては、将来的な負担や住民による滞納を避けるために、「均等積立方式」を推奨しており、「段階増額積立方式」を取っている場合は、早い段階で課題視していく必要があるとも言えます。

修繕積立金不足は社会問題化している!

最初からもっと価格を均しておけばこんな事にはならないのですが、現実のマンションは管理費が高く、修繕積立金は低く設定されているのです。

それが故に修繕積立金を値上げしなければならないのですが、そう簡単に値上げできません。なぜなら基本的に値上げに賛成する住民の方はほとんどいないからです。

「来月から修繕積立金が2倍になります」

そう言われて反対しない人はいないでしょう。もちろん最終的には妥結点を見出して値上げをされていくのですが、設定の価格まで値上げをするのは難しいでしょう。

そして、「初期設定が低い→値上げが想定通りできない→修繕金が足りない」というサイクルに陥ってしまのです。日本経済新聞でもこの問題は取り上げられています。

マンションの修繕工事に使う財源が不足する懸念が強まっている。所有者が払う修繕積立金の水準を日本経済新聞が調べたところ、全国の物件の75%が国の目安を下回っていた。適切な維持管理には引き上げが必要だが住民合意は簡単ではない。

-日本経済新聞:マンション修繕金、75%が足りず 高齢化で増額難しく

修繕積立金の不足は社会問題化しているのです。

不足する修繕積立金の対策はどうすればよいのか?

適切に値上げをすることも大切ですが、割高に設定されている管理費を減らして、それを修繕積立金に回すことが最も効果的です。

通常余った管理費は次期の管理費に回すこととなっているため、修繕積立金に回すことは、管理規約に定めたうえで総会の決議が必要です。しかし余ったお金を将来のために貯金していくことに反対する住民はいないでしょう。

例えば、年間100万管理費を削減できたとすると、10年で1000万円です。大規模修繕の周期は12年と言われるますので、大規模修繕までに毎回1200万円分貯金ができることになります。

これはあくまで理論上の数値ですが、管理費の無駄を減らすことには非常に大きな価値があります。そして100万以上の単位で管理費を削減されている管理組合様は多くいらっしゃいます。

マンションの管理費と修繕積立金の用途と役割

マンションの管理費と修繕積立金、それぞれの役割と用途について掴んでいただけましたでしょうか?そして分譲マンションが抱える問題についても理解いただけましたでしょうか?

ここでお伝えいしたポイントは2つです。

1つはマンションの管理費は支払いであり、修繕積立金は貯金であること。そしてもう1つは支払いである管理費は削減する努力を行い、貯金である修繕積立金を増やす工夫をしなければならない、という事です。

多くのマンションでは管理費が高く、修繕積立金が不足しているという現実があります。管理費と修繕積立金が抱える問題を知ることで、解決に役立ていただけたら幸いです。

記事監修

マンション管理士:古市 守(ふるいち まもる)

管理会社変更をはじめとするマンション管理組合のコンサルティング、管理計画認定制度支援や事前審査担当、自治体のマンション調査、マンション管理コラムの執筆・監修などで活動。

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