管理会社変更時に検討したい専門委員会の立ち上げ手順や役割を解説
管理会社変更を検討したいけど、スムーズに進める方法はないのだろうか?
検討するにあたって、組合員との合意形成をうまく図っていくことはできないのかな?
管理会社変更を検討する際に、このような疑問を持っている理事や監事、そして組合員も多いと思います。
その場合、委員会形式で討議することが有効であり、管理会社変更委員会や管理会社検討委員会等の名称により新たに立ち上げられます。
今回は、このような管理組合の疑問に応えるために、管理会社変更のための専門委員会の役割や、立ち上げから解散までの流れ、さらに専門委員会を立ち上げるのが良い理由と注意点について解説します。
管理会社変更における専門委員会の役割
管理会社変更の際に立ち上げる専門委員会には、どのような役割が求められるのでしょうか。
専門委員会や委員に対して考えられるおもな役割を確認していきます。
新たな管理会社候補を比較検討する
まず、客観的な視点から新たな管理会社候補を比較検討することが挙げられます。
もし現時点で付き合っている管理会社があれば、新たな管理会社候補と比較して良い点、悪い点なども挙げることが必要です。
理事会と違って、管理会社と直接やり取りしていない専門委員会ならではの、一歩引いた視点から比較検討することも重要な役割です。
理事会に管理会社候補を上申する
専門委員会で比較検討した管理会社候補を、それぞれの会社の良い点、悪い点を含めて理事会に上申します。
また、委員は理事会に参加して、検討の過程や新たな候補として挙げた管理会社の詳細等を説明することも求められます。
理事会で新たな管理会社候補の決議ができるように、支援していくことが重要な役割といえるでしょう。
総会で管理会社変更議案に対して支援する
理事会で管理会社変更を決議した後は、組合員に対する総会での管理会社変更決議が必要です。
その際には、議案の中に織り込まれ、総会当日は議長である理事長中心に進行していくことになるでしょう。
一方で、総会審議中に組合員から質問が出た場合には、本議案がスムーズに進行するために、委員も総会に出席して、理事長を支援することも必要となります。
専門委員会の具体的な立ち上げから解散までの流れ
次に、専門委員会の立ち上げから、解散までの流れを簡単に紹介します。
理事会で管理会社変更のための専門委員会立ち上げを決議する
まず、理事会内で管理会社変更のための専門委員会立ち上げを決議するところから始めます。
国土交通省が提示する最新版の標準管理規約にも、第55条に専門委員会の設置の記載があります。
そのため、多くの管理組合では理事会の権限と責任により、専門委員会が設置できるようになっていると考えられます。
従って、専門委員会を立ち上げる場合には、基本的には理事会の決議が必要となります。
組合員から候補者を募る
専門委員の就任については、管理組合から幅広く募るのが良いと考えられます。
理由としては、マンションの管理に関する専門性が無かったとしても、現管理会社の対応状況など、普段の生活を通じて組合員としての意見を吸い上げることも非常に重要なためです。
専門委員会には自薦、他薦は問わず、また立候補によってやる気のある方に参加してもらうなど工夫することが大切といえます。
理事会で専門委員会のメンバーを選定する
立候補、自薦、他薦問わず名前が上がったメンバーから、委員を選定します。
その中には、理事会で負担となる理事長以外の理事や監事が何名か入っていると、理事会とのつなぎ役を果たすため、非常に良いでしょう。
また、多数でない場合は、極力やる気のある立候補の方を中心にメンバーに入れてあげることも、合意形成のしやすさという点で効果を発揮するかもしれません。
第一回の会合で委員の役職や専門委員会の目的や役割、目標を決める
選定されたメンバーとともに、第一回の委員会を開催します。
お互いの自己紹介から始め、今回結成された専門委員会の目的や役割、さらには最終的に何をすれば良いのかの目標を決めることとなります。
また、委員長や書記をはじめとした、各委員の役職や担当も決めておくとよいでしょう。
複数回の会合で管理会社を絞り込む
何回かのやり取りの中で、候補となる管理会社を絞り込んでいくこととなります。
絞り込むにあたって、候補各社からのプレゼンテーションを受けることも重要です。
その場合は委員以外の組合員にも参加してもらい、意見交換を行ったり、プレゼンテーションによる各候補会社の評価等、アンケートを取得することによって、多面的に候補会社を絞り込んでいくことも大切です。
理事会を経由して総会に諮り管理会社を決める
新たな候補会社を1社絞り込み、理事会の決議を経て、総会に諮ることとなります。
その中で、新たに変更する管理会社の紹介や、なぜその会社を候補とするかに至った経緯も改めて組合員に説明することとなります。
前章でも紹介しましたが、委員はこの段階で議長である理事長を支援することも重要です。
決定したら、現管理会社に対して、理事会経由で解約通知を行う必要があります。
新旧管理会社の引継ぎを行う際の確認や立会いを行う
新旧管理会社の引継ぎにおいては、基本的には理事長をはじめとした理事会メンバーが立ち会うことが多いかもしれません。
しかしながら、理事会に負担がある場合等、引き続き委員が協力することもあるでしょう。
選定の過程で、管理会社が提示した管理委託業務の内容や見積もり金額と相違ないかどうか、チェックすることが重要です。
新管理会社での業務開始と委員会の解散
無事新管理会社が業務を開始した段階で、専門委員会としては終了であり、解散となります。
そのあとは理事会が引き続き対応することとなります。
管理組合によっては、引継ぎを最後まで見届けず、総会での新管理会社の決定をもって解散となることも考えられるでしょう。
管理会社変更で専門委員会を立ち上げるのが良い理由
管理会社変更を検討するにあたり、専門委員会を立ち上げるのが良い理由を紹介します。
管理会社変更議題を集中的に討議できる
理事会ではどうしてもほかの議案もあり、管理会社変更議題を集中討議することが難しくなります。
さらに、理事会とは切り離した専門委員会で集中的に討議することにより、実のある結果が期待できます。
理事や監事の負担が軽減できる
理事会で議論すると、理事や監事である役員の負担が増加します。
このタイミングで就任した理事や監事にとって、業務が多くなり不公平という意見も出てしまうかもしれません。
それを避けるためにも、委員会形式は有効であると考えられます。
客観的に管理会社比較ができる
理事会では、現管理会社とやり取りが多いため、現管理会社でも問題はないのではと考えるかもしれません。
一方で、委員会形式で理事や監事以外の組合員にも参加してもらうことにより、果たして現管理会社がよいのか、候補管理会社との客観的な比較検討も可能となります。
理事会ではなかなか出てこない、組合員の率直な意見や冷静な判断を取り入れることができるかもしれません。
管理組合員を巻き込んで合意形成を図ることができる
委員会に参加した組合員は、新たに管理会社変更を検討したいと考えて参加してくれた方です。
少なくとも、その方は理事会メンバー以外では合意形成が諮りやすい組合員といえます。
その他の委員以外の組合員への伝達を含めて、管理組合全体で合意形成を図っていくためには、このような理事会メンバー以外を巻き込んでいくことも、委員会運営上重要であるといえるでしょう。
委員会立ち上げや運営時の注意点
最後に、委員会の立ち上げや運営時に注意すべきことを紹介します。
委員会は管理組合のみで運営する
もし現管理会社を変更する場合は、その会社から委員会運営協力を取り付けるのは難しくなります。
通常考えると、現管理会社は自分たちの契約終了のために、わざわざ専門委員会に協力する義務は無いからです。
また、協力に対しては現管理会社側からしても心理的障壁があるでしょう。
ただし、現管理会社側から管理委託契約終了を申し出ている場合は、会議日程の委員への伝達や理事会資料への反映等、協力してもらえるかもしれません。
そのような状況であっても、専門委員会への出席は辞退して貰う形が良いと考えられます。
現管理会社に管理会社変更を伝えるタイミングをよく検討する
どのタイミングで現管理会社に変更を伝えるかですが、基本的には理事会にて新管理会社が内定した段階が良いと考えられます。
理由は、次の引き受け手がない段階で、現管理会社に終了を伝えるのは管理組合として、マンション管理の空白期間が発生するという大きなリスクが発生する可能性があるからです。
予め「御社との管理委託契約を終了し、管理会社を変更する予定である」と伝えることもあるかもしれませんが、その後の現管理会社の業務が雑になったりするリスクもあります。
決まってから伝える場合であっても、委員会の運営は現管理会社に知られずに秘密裡で進める工夫も必要でしょう。
まとめ
管理会社変更を検討する際に、委員会形式で実施する場合の役割や立ち上げの手順、さらには委員会形式におけるメリットや注意点について紹介しました。
委員会方式で実施することは、理事会の負担を軽減するだけではなく、組合員の参加を通じた合意形成や、管理組合全体の協力体制等の効果があります。
また、委員会で議論することとなるため、理事会独断という見解も避けることができます。
メリットや注意点等を踏まえながら、今後の管理会社変更を検討する際の参考にしていただければ幸いです。