マンションの修繕積立金に関する24の知識
これまでマンション知恵袋でご紹介してきた修繕積立金に関することを6つの分類、24の項目に分けてご紹介します。
より良いマンション管理実現の参考にしてみてください。
修繕積立金の徴収方法は2つの方式
1 均等積立方式
計画期間中同じ金額を徴収する方式です。区分所有者の負担もあることから、段階増額積立方式に代表される、修繕積立金を値上げを都度行うのは望ましくないとして、国土交通省はこの方式を推奨しています。
2 段階増額積立方式
3年ごと、5年後などに徐々に値上げをする増額です。比較的築浅の多くのマンションで取られている方式です。
マンションの修繕積立金を徴収する方法はこの2つであり、「段階増額方式」は負債を将来に先送りする方式、将来の負担を同じように割り当てるのが「均等積立方式」です。
参考リンク:修繕積立金の積立方式〜均等積立方式と段階増額積立方式
修繕一時金が抱えるリスク
1 修繕積立金の一時金とは
修繕一時金とは毎月の修繕積立金の徴収とは別に集める修繕金のことを指します。大規模修繕の費用が不足する際に集めたり、10年ごとのサイクルで集めたりします。
その額も高額で、数10万から場合よっては100万以上徴収することもあります。
2 修繕積立金の一時金のリスク
修繕一時金は結局は前述の段階増額方式と同じで、負債を将来に先送りにする計画です。この一時金の最大のリスクは全区分所有者から遅滞なく徴収することがほぼ不可能ということです。
一時金を払えない区分所有者がいた場合、それは新たな問題の火種になります。
参考リンク:修繕積立金の一時金が抱えるリスクと必ずすべき対策
修繕積立金の相場と適正額
1 修繕積立金の相場
国土交通省が発行している令和5年マンション総合調査によると、修繕積立金の月額徴収額の専有部分の床面積あたり相場は186.5円/㎡となっています。
古いマンションほど平方メートルあたりの単価は高くなっており、築年数が新しいマンションほど平方メートルあたりの単価は下がっています。
2 修繕積立金の適正額
国土交通省が発行しているマンションの修繕積立金に関するガイドラインによると、修繕積立金の専有部分床面積当たり月額適正額として、修繕積立金事例の3分の2の割合で含まれる幅を提示しています。マンションの建築床面積によって以下の通り示されています。
・5,000㎡以下:235~430円 平均335円
・5,000㎡超~10,000㎡以下:170~320円 平均252円
・10,000㎡超~20,000㎡以下:200~330円 平均271円
・20,000㎡超:190~325円 平均255円
・地上20階以上のタワーマンション:240~410円 平均338円
引用:国土交通省 マンションの修繕積立金に関するガイドラインより
仮に、マンションとして一般的である5,000㎡超~10,000以下のマンションを想定してみましょう。
相場と国土交通省が提示する平均額252円との差は65.5円ですが、専有面積50㎡の部屋であれば、毎月3,275円、年間39,300円、大規模修繕の一般的なサイクルである15年であれば、589,500円となります。
単純に大規模修繕工事において、平均額程度が必要であると考えれば、589,500円の一時金が必要になるということです。
参考リンク:修繕積立金の相場と適正額の調べ方
修繕積立金が値上げされる6つの理由
今世にあるマンションで修繕積立金を値上げしないマンションはないはずです。ではなぜ修繕積立金は値上げされるのでしょうか?修繕積立金が値上げされる理由を5つ紹介します。
1 分譲時の修繕積立金の価格設定が低いから
マンションを売りやくするために、分譲時の修繕積立金は適正額よりも大幅に安く設定されています。安く設定された分、将来大きく値上げせざるを得ない状況になるのです。
2 修繕積立金の値上げは決まっているから
前述した「段階増額積立方式」でマンションの資金計画が作成されているからです。つまり、修繕積立金は当初から値上げありきの計画になっているために、一定期間経過後に値上げされます。
3 修繕工事費が上がっているから
労働人口の減少に伴い、修繕工事を行う職人の労働者数が減っています。そのため人件費が高騰し続けています。さらには、大規模修繕に必要な塗料やタイル等の材料費も高騰しています。
「修繕積立金を値上げしたのに大規模修繕の費用が不足している」そんな状況になっているのであれば、人件費や材料費の高騰も1つの要因のはずです。
4 大規模修繕にグレードアップ工事は組み込まれていないから
マンションの年数が経過すれば、必ず設備も劣化します。マンションを快適な状況に維持するための工事が大規模修繕工事なのですが、この大規模修繕工事の予算計画にはバリアフリー化などのグレードアップ工事の費用が含まれていないことがあります。そのため、マンションのグレードアップ工事を行うと修繕積立金が一気に不足する可能性があり、結果値上げにつながります。
5修繕工事費価格が必要以上に高いから
マンションの大規模修繕工事を理事会主体で動かず、任せきりにすると必ず価格は高くなります。管理会社に任せれば手間は掛かりませんが、その対価として費用は割高になります。その結果修繕積立金が不足します。
参考リンク:修繕積立金はなぜ値上げされるか?5つの理由とその対策
6定期的に長期修繕計画に合わせて修繕積立金計画を見直していないから
管理組合に比較的多いのは、定期的に長期修繕計画を見直していないことも多いでしょう。国土交通省は、30年以上の長期修繕計画を5年程度毎に見直すことを推奨しています。その場合、工事価格の金額が見直されることもあります。合わせて、修繕積立金の計画も見直す必要があり、修繕積立金の値上げという対応が必要となってしまいます。
参考リンク:マンションの長期修繕計画とは?その重要性と修繕積立金との関係
修繕積立金の不足を解消するための6つの提案
修繕積立金が不足により値上げされてしまった場合にできる対策は何でしょうか?ここでは値上げによる修繕積立金を増額ではなく、管理費を削減して修繕積立金に上乗せる方法を4つご紹介します。
1 管理会社を見直す
マンションの管理委託費の大部分を占めるのは管理会社への管理委託費です。ここを削減することができれば、管理費の余剰は修繕積立金会計に回すことができ、修繕積立金は大きく改善します。
2 電気料金を見直す
普段の区分所有者における生活費に直接影響しないため、気にしないことも多いですが、マンションには共有部の廊下、エレベーター、機械式駐車場、エントランスなど意外にも多くの電気が使われています。その結果、毎月管理組合として多額の電気代を支払うこととなります。これらの電気利用料を減らす、有効に活用するということができれば、電気代は大きく削減します。
3 設備契約を見直す
最近では電力の自由化などもありますが、マンションの設備の契約形態を変更するだけでも費用は下がります。例えば、エレベーターなどの設備はフルメンテナンス契約とPOG契約の2種類があり、後者のほうが価格は安くなります。
4 保険契約を見直す
マンションの共有部には管理組合が保険をかけています。多くの管理組合ではこの保険は分譲時に設定された補償内容のままになっていると思います。
この保険の内容や保険会社を見直してみるとぐっと保険料が下がる可能性があります。また保険の契約期間を変更するだけでも保険料は下がります。
ここでは毎月の維持費である管理費を削減する方法を4つご紹介しました。また大規模修繕の工事費そのものを下げる方法として、管理組合で直接施工会社を探す方法もあります。
参考リンク:修修繕積立金の不足を解消するための4つの提案
5滞納を減らす
管理費や修繕積立金の滞納が続くと、管理組合としても大きな影響を及ぼすこととなります。滞納はすぐに対応することによって、回収が求められます。場合によっては、法的手続きを取ることによって、長期滞納は減らしていく必要があります。
参考リンク:マンション管理費の滞納!理事会はどう対応するべきか?
6新たな収入手段を見つける
上記4つのようにコストを減らすということも重要ですが、逆に収入を増やすという考え方もできます。
具体的には、駐車場を外部の方に開放して利用料を徴収することや、携帯電話会社のアンテナを屋上に設置して設置料を得ること、集会室を組合内外に開放して利用料を得ることなどです。
これらの収入を修繕積立金に回すことができれば、長い目で見た場合には不足解消に少しでも寄与できる可能性があります。
修繕積立金の運用先
修繕積立金を定期預金に入れておくだけでは利息がつきません。マンションというコミュニティであるからこそ、多額の修繕積立金が集まり、効率良く運用すればまとまったリターンを得ることができます。
修繕積立金の運用も含めた6つの預け先について利用が多い順にご紹介します。
1 銀行の普通預金
もっとも利用が多いのは銀行の普通預金です。換金性は高いですが、利息はほぼつきません。
2 銀行の定期預金
次いで利用が多いのは銀行の定期預金です。普通預金よりも金利は高いですが、換金性は低いです。大規模修繕のサイクルに合わせた利用やペイオフ対策として利用されています。
3 銀行の決済性預金
3番目は決済性預金です。共有財産という観点から修繕積立金を決済性預金に預けているのではないでしょうか?
4 マンションすまい・る債
マンションすまい・る債とは住宅支援機構は発行している債権です。管理計画認定を取得したマンションには利率の上乗せというメリットもあり、銀行預金の金利が低いこともあって年々利用する管理組合が増えています。
5 積立型保険
銀行よりも保険のほうが金利が高いために、積立保険を利用している組合もあります。ただし、想定外の工事で途中解約になった場合、返済率が悪くなるので注意が必要です。修繕積立金に余裕がある組合は検討の価値はあると思います。
6 国債・地方債
わずかですが、修繕積立金で国債や地方債を購入して運用している管理組合もあるようです。多額の修繕積立金が集まる大規模マンションではこのような運用は多いかも知れません。
参考リンク:修繕積立金の運用について
まとめ
いかがでしたでしょうか?
・修繕積立金の徴収方法
・修繕積立金一時金のリスク
・修繕積立金の相場と適正額
・修繕積立金が値上げされる6つの理由
・修繕積立金の不足を解消する6つの提案
・修繕積立金の運用先
についてご紹介しました。ここで紹介した修繕積立金に関する24個の知識がマンション管理の役に立てれば幸いです。